今年度は、年度始めに低金属量星の形成に関する研究が大きく進み、米国の共同研究者らと星周円盤蒸発の数値シミュレーションを行って、光電離加熱による円盤蒸発率すなわち円盤寿命のガス金属量依存性を明らかにした。金属量を変えて多数のシミュレーションを行い、その結果を再現する解析モデルを構築した。このモデルは、最近の銀河系外縁部星形成領域の観測より示唆される円盤寿命を説明することができる。 次に、すばるFMOSサーベイで検出された星形成銀河の空間クラスタリング解析から、宇宙の構造成長率を求め、修正重力理論モデルの検証をおこなった。この論文では、本研究により生成されたN体シミュレーションをもとにした擬似天体カタログを用いて解析に必要な共分散行列などを導いた。従来の研究では赤方偏移1以下の、比較的現在に近い時期での構造形成成長率を測定していたが、本研究では赤方偏移1.4程度での成長率をもとめ、修正重力理論モデルに新たな制限を加えた。 遠方銀河探索でも大きな成果が得られた。本研究により2014年に提案された、電離酸素の輝線を用いて遠方銀河の赤方偏移を決定できることを、ALMAを用いた実観測によって実証した。同時に、検出された銀河は酸素輝線が捉えられた最も遠方の銀河であることが判明し、サイエンス誌に論文を発表した。 最後に、遠方超新星探索のためのアプリケーションを開発した。すばるハイパーシュープライムカムにより得られた画像に差分解析を行い、時間変動天体を検出するために機械学習の知見を活用し、AUCブーストとよばれる分類手法や深層学習を適用した。25等級以上の暗い天体にたいしても効率よく時間変動を検出できるアプリケーションを開発し、実観測データに適用した。
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