研究課題/領域番号 |
25287053
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 正健 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (80213833)
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研究分担者 |
内山 隆 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (60361656)
山元 一広 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00401290)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重力波 / レーザー干渉計 / 極低温 / 光学薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、低温で超安定光共振器(ファブリーペロー共振器)を実現しようとするものである。近年、光共振器の揺らぎの一つとして誘電体多層膜コーティングに起因する熱雑音が深刻であることがわかってきた。その理由は、通常は超低損失コーティングとしてTa2O5とSiO2の交互層が使われているが、このうちTa2O5の機械損失が大きいからである。光共振器を極低温に冷却することにより、この熱揺らぎをかなり低減することが可能であるが、さらに技術開発が進めば、いずれこの熱揺らぎによって光共振器の性能が左右されることになる。それに備えて、主として低損失の誘電体多層膜コーティングを開発することを本研究の第一目的としている。この開発研究の結果、将来の重力波検出器の感度を向上することが可能となり、重力波天文学の推進にも貢献することになる。 今年度は、まず、サファイア薄板(円板)に誘電体多層膜をコーティングした測定サンプルを複数個作成した。コーティングは国立天文台が保有する特殊コーティング装置(イオンビームスパッター装置)で行った。この装置は通常の反射ミラーを製作する場合、SiO2/Ta2O5の組み合わせを使うが、ターゲットを交換すれば種々の酸化物の組み合わせが可能となる。今回はTaターゲットにTi薄板を張り付けることで、Tiドープ膜の成膜も行った。次に、製作した薄膜の機械的Q値を測定した。サファイア薄板をサポート装置に固定し、低温容器に入れて冷却して機械的Q値の温度依存性を測定した。この測定では、多くの振動モードで節となる円板の中心のみを支持しているため、サポート自体による散逸の影響が最小であり、正確な測定が可能である。サファイア円板の振動はデータロガーに記録し、低温容器中で温度を変えながら細かく測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心となるのはコーティングを施したサファイア薄板の機械的Q値を測定することであるが、このサファイア薄板の仕様について検討が必要になったため、当初計画がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
機械的Q値の測定結果をまとめる。それとともに、測定結果の比較のため、天文台のコーティング装置以外でのコーティングを施したサファイア薄板を製作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において主要な物品となるサファイア薄板の仕様決定が遅れたため、その他の物品についての購入も見合わせることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
サファイア薄板の仕様が決まった時点で、速やかに他の物品の購入も進める予定である。
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