研究課題/領域番号 |
25287055
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中村 正吾 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50212098)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液体キセノン / シンチレータ / 赤外発光 |
研究実績の概要 |
2年目は最初に,初年度に完了出来なかった光学系の構築の残りと,改良したキセノンガス系の構築,そして,励起線源の強化を行なった。 光学系については,本研究で必須である微弱な赤外光を高いSN比で測光するための近赤外用の分光器と光電子増倍管について,基準光源を用いた測光試験を行い,当初の計画通りの基本性能を確認した。さらに,液体キセノンを真空槽内の光学セル内に貯めた状態で真空紫外領域での測光系と近赤外領域での測光系を切り替えられる広波長領域での測光のための改良された光学系を考案し構築を行なった。 キセノンガス系については,キセノン用の既存の純化装置に加えて新規の純化装置を追加導入した他,停電などの非常時に懸念される液体キセノンの気化による圧力上昇に備えて,ガスの自動退避系を導入した。 さらに,励起用の放射線源として,約2MBqの強度の137Csと57Coのγ線源を新規に導入し,従来よりもシンチレーションの発生頻度を飛躍的に高めて,データの高い取得効率を可能にした。 以上の準備に続いて,気体キセノンと液体キセノンについてγ線での励起による近赤外領域における測光試験を開始した。詳細な解析と評価は終わっていないが,これまでに,気体キセノンについては低密度ゆえの低光量によりシンチレーションの信号のSN比がまだ十分に高くないため,また,液体キセノンについては見込み通りにシンチレーションの信号を捉えたものの,いずれも現在までに近赤外の有意な発光を検出していない。これらの測定は感度を上げて次年度に継続する。 一方,本年度の後半になって近赤外領域用の光電子増倍管について購入品よりも約1/50の低ノイズ化を実現した改良品が発表されたので,より高感度の測定を目指すために改良品への置換えを検討している。その他,従来に行なった真空紫外領域における発光特性に関する研究結果を,国際雑誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の遅れを挽回し,実験の準備を進めて気体と液体のキセノンについて赤外光の測光試験を開始することが出来て,今年度の目標をおおよそ達成した。測光試験は,概ね当初に計画した通りの実験条件を達成したが,比較のために行なった気体キセノンでの測定は低密度ゆえの低光量に直面し,液体キセノンでの測定も真空紫外光は測定出来たものの近赤外光の有意な信号を捉えられないなど,当初に考えていなかったことも生じた。しかし,それぞれの原因は考えられる範囲内にあり,解決法については次年度に適切な対処方法を準備しているので,全体として概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初期の試験で近赤外発光を有意に測定出来ていない現状では,今後に必要なことととして,光学セルの形状の改良によりシンチレーション光の発生をより高い効率で検出することと,分光光の測光を高いSN比で行なうために近赤外光用の光電子増倍管のノイズを極力減らすこと,そして,先行研究で知られている真空紫外領域での発光特性と精度良く比較出来るようにすることが重要であると考えている。そこで,このそれぞれを達成するために,光学セルの形状の改良品の製作,現在所有している近赤外用光電子増倍管の低ノイズの改良品への置換え,そして真空紫外域から近赤外域までの広い波長域での正確な校正を行なう予定である。 特に,近赤外用光電子増倍管の置き換えは,実現出来れば測光のSN比は約50倍高まることが期待されるので実現を目指す。また,広い波長領域での光検出効率の校正のために,広い波長領域で発光する強度の安定した校正光源の導入を検討する。導入出来れば,液体キセノンを真空槽内の光学セル内に貯めたままで真空紫外領域での測光系と近赤外領域での測光系を容易に切り替えられる測光系への改良が概ね済んでいるので,次年度に広い波長領域での発光スペクトルの測定が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,信号計測用にデジタルオシロスコープとキセノンガス系の購入を計画していたが,現在所有している近赤外用の光電子増倍管について低ノイズの改良品が開発されたことの情報を得たため,置換出来れば予定より大幅に高い精度の結果が期待されることから,次年度に改良品への改造かもしくは置き換えを行なうことを見込んで予算の繰り越しを行なった。
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次年度使用額の使用計画 |
高い精度での測光を行なうため,現在所有している近赤外用の光電子増倍管を低ノイズの改良品に改造するか置き換えを行なう。また,広い波長領域での光検出効率の校正のために,広い波長領域での光強度の校正光源を購入する。
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