研究課題
最終年度は最初に,実験装置の最適化を念頭において,前年度に明らかにした液体キセノンの700-1,100nmにおける近赤外発光の考え得る発光機構について研究を行なった。そして,その機構として,キセノン原子の励起状態間の遷移に伴う発光である可能性に到達した。当該の遷移に基底状態が関与しなければ液体キセノンの自己吸収が無視出来ることになり,近赤外領域における液体キセノンの高い透過率をよく説明出来る。実際に,米国のNISTが公開しているキセノン原子もしくはイオンの発光スペクトルのデータベースにおいて近赤外領域の発光が記載されていることを確認した。続いて,近赤外発光に関する上記の仮説を確かめる参考にするため,真空紫外領域から近赤外領域まで広範囲な波長領域で,液体キセノンと類似の機構で発光することが期待される石英窓のキセノンフラッシュランプモジュールと真空装置アダプタの開発と導入を行ない,実際に同フラッシュランプの発光スペクトルを測定して,近赤外領域を含む広い波長領域で原子起源の発光の特徴を得た。その結果,真空紫外領域を含む広い波長領域で,放射線検出器として良く知られるエキシマ起源の発光に加えて,原子起源と考えられる発光も一定程度見られることと,その発光の時間応答特性が波長によって変化し,場合によっては励起から遅れた遅延発光を伴うことも見出した。したがって,近赤外領域の発光スペクトルを良く理解するためには,個々の発光波長毎に当該波長における発光時間特性を事前に十分に明らかにしてから発光強度を求めることが必要であることが明らかになった。このことは当初は想定していなかったので,今後に近赤外発光を精度良く行なうため,新たな指針を立てることになった。以上の最新の知見は,まとめられたものから,本研究の後に続けて進めるべき研究の方向性と共に,2回の日本物理学会において発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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