研究実績の概要 |
2013年7月に放球を行ったPoGOLite気球実験は、残念ながらフル観測には至らなかったが3日間の科学観測と、2週間の動作実証に成功し、「かに星雲」からの硬X線偏光に上限をつけその成果を論文(Chauvin, M., Mizuno, T. et al. 2016, MNRAS 456L, 84)として出版した。 ASTRO-H衛星搭載SGD検出器は、フライト品と同一設計のコンプトンカメラを用い、大規模放射光施設SPring-8で偏光ビーム試験を行った。122 keV、194 keVの二種類のエネルギーで装置の様々な場所に偏光ビームをあて、入念な偏光応答の測定を行った。この成果は投稿論文を準備している。関連して、現行の「すざく」衛星を用い、GeVガンマ線で発見されたCygnus cocoonと呼ばれる系内の宇宙線粒子加速天体をX線でフォローアップし、電子シナリオに制限をつけた。この成果は論文(Mizuno et al. 2015, ApJ 803, 74)として出版した。同じ白鳥座Xにある高エネルギー天体VER J2019+368についてもフォローアップ観測を行い、対応天体候補と考えられるパルサー星雲からの放射の輝度分布とフラックスを精度よく算出した。この成果については学会で報告・議論を行い、投稿論文を準備している。 将来装置の開発では、前年度に引き続き、小サイズのプラスチックシンチレータとPPDを組み合わせて様々な条件下で性能評価を行った。目標(2-3 keV)に迫る5 keV程度までエネルギースレッショルドを下げることに成功し、さらなる改良点の指針も併せて、2015年9月の国際会議で発表し、また論文を投稿し受理された。(Nakaoka et al. 2016, NIMA accepted)
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