研究課題/領域番号 |
25287061
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
村田 次郎 立教大学, 理学部, 教授 (50360649)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 原子核 / 対称性 / ベータ崩壊 / 時間反転 |
研究実績の概要 |
カナダのTRIUMF研究所で進めている、偏極したLi-8原子核を用いた時間反転対称性の破れ探索実験、S1183-MTV実験を高度化し、平面型ドリフトチェンバーから次世代検出器である円筒型ドリフトチェンバーに進化させる事で、主として系統誤差を大幅に抑制しうる、世界最高精度での時間反転対称性の検証を行う事を目的としている。本研究では、偏極Li-8核を生成する為に、TRIUMF研究所のサイクロトロンを用いてLi-8核を大量に生成し、これを偏光レーザーを用いる事で高偏極させ、実験に使用する。本研究の前段階として行った平面型ドリフトチェンバーを用いたMTV-Run-II実験において、既に統計精度は世界一の水準に達しており、次世代機の円筒型ドリフトチェンバーでは主として系統誤差を抑制して最終的な精度をあげる事を目指している。平成26年度までの研究で、TRIUMF研究所のビーム、および放射線源を用いたオフライン試験を徹底的に行う事で、主要な系統誤差の原因とその性質、抑制方法について十分な理解をすることが出来た。この進展を受けて、平成27年度にはビームを用いた初めての物理データ収集を行う予定である。とりわけ、パリティの破れに起因する難しい系統性の評価の為の新しい技術の試験と、本番実験への実装を予定しており、MTV実験が始まって、標準模型を検証しうる最初の本格的なデータ収集に向けて準備を完了させつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対称性の検証という精密実験では、系統誤差の評価が最も重要で、かつ、もっとも難しい課題である。本研究では平成26年度に、長らく解決が難しかった、パリティの破れに起因する系統性の原因を、徹底的なオフライン試験を行う事でついに突き止める事に成功した。この系統性の事前評価が、平成27年度に予定している物理データ収集に先立って完了している事が必須であったが、これを達成する事が出来た事は、計画通りとは言え、重要な成果をあげられたものと自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に判明した、パリティの破れに起因する系統性を抑制する為、人為的にビーム位置を変更しながら物理データ収集を行うシステムを構築、試験を行った上で、高い統計精度での物理データ収集を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも平成26年度の実験が順調に進んだ結果、平成26年度と平成27年度にカナダのTRIUMF研究所にて行う測定の計画を再検討し、平成26年度分の滞在期間をやや短縮して平成27年度に実行した方がより効率的に成果があげられるという結論に至ったため、使用計画を変更した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定しているカナダのTRIUMF研究所への渡航期間を、当初想定よりも1週間程延長して実施する計画である。
|