研究実績の概要 |
今年度の主な研究成果は以下の通りである。
(1)我々は四重像QSOレンズを用いて温かいダークマターの質量に下限を付けた(Inoue, Takahashi, Takahashi, Ishiyama 2015, MNRAS 448, 2704)。赤方偏移0<z<3の領域において、「カスプ問題」や「行方不明の矮小銀河」問題を解決する可能性をもつ温かいダークマターモデルにとって否定的な結果となった。言い換えると、視線方向に太陽質量の一億倍程度以上の質量をもつ構造がなければ、フラックス比異常を説明することは困難であるということになる。今後は、今回我々が仮定した重力レンズ銀河の中心付近の密度分布の性質や、視線方向の射影重力ポテンシャルの統計的性質について詳細に調べる必要がある。また、バリオンの重力的影響も考慮していく必要がある。
(2)我々は四重像QSOレンズMG0414+0534にみられるフラックス比異常がレンズ銀河内のサブハローだけでなく、視線方向に存在するボイドやフィラメントによっても説明可能であることを初めて示した(Inoue 2015, MNRAS 447, 1452)。今後は、MG0414+0534において視線方向の射影重力ポテンシャルの性質を観測的に明らかにし、本当にボイドやフィラメントによってフラックス比が変化しているのか否か確認する必要がある。そのためにはALMAを用いたサブミリ波観測が不可欠である。
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