研究実績の概要 |
アタカマサブミリ波ミリ波電波干渉計(ALMA)によって観測されたサブミリ波銀河SDP.81の4重重力レンズ像を用いて、以下のことが判明した(Inoue, Minezaki, Matsushita, Chiba 2016, MNRAS 457, 2936)。1)拡がった光源に対する「フラックス比異常」を発見した。特にその内、パリティ(像の表裏)が正であるレンズ像が系統的に暗くなっていることを発見した。2)1)の効果は銀河間空間において局所的に密度が低いボイド領域を考えれば自然に説明できる。また、その表面質量密度は1秒角の2乗あたり太陽質量の10の8乗倍程度である。3)一酸化炭素の輝線から背景となる主レンズに対し、0.01秒角のオーダーのレンズ像の位置のずれ(アストロメトリックシフト)が観測された。これを視線方向の非線形構造による重力レンズ効果と解釈しても矛盾は生じない。 銀河系とアンドロメダ銀河に付随する矮小楕円体銀河の恒星系に対して、それらの視線速度分布から、背景にあるホストハローに付随するサブハローの密度分布を求めた(Hayashi and Chiba 2015, ApJ, 810, 22)。その結果、以下のことが判明した。1)中心部のダークマターの分布は、カスプ状およびコアの2種類に分類される。2)これらのサブハローは大きく扁平な形状をしていることが示唆され、CDMに基づく数値シミュレーションの結果と食い違う。さらに、サブハローの質量分布をその回りの円軌道を想定した際の回転速度で表現する際、回転速度が最大となる半径以内に含まれるダークマターの面密度が、どれも1パーセク平方あたりおおよそ太陽質量の20倍となり、しかも、どの大きさのハローでも一定のユニバーサルな値であることを発見した(Hayashi & Chiba 2015, ApJ, 803, L11)。
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