研究課題
最近私たちは、結晶中の自由電子の非弾性散乱過程に光電子回折とは逆の吸収過程があり、エネルギー損失電子の角度分布に、励起源の偏光や種類(光・電子)に関わらず、光電子回折模様とは真逆のネガコントラスト模様が観察されることを発見した。この「逆光電子回折」による新規原子配列解析法の開発が目標である。1)測定の中心となるSPring-8 BL25SUは2014年9月までにブランチ化を含む大幅な改造工事があり、それに合わせ表示型分析器の移設と軟X線ビームサイズと集光位置の最適化による高分解能化などのアップグレードを行った。ビーム径がそれまでの300μmから数10μmに収束させることができ、不均一試料でも状態の良い場所を選んで回折測定が行えるようになった。2)同時にBL25SUの次期分析器計画に備え、代替・発展形の小型分析器を作製する。2014年度に電源・分析器・磁場遮蔽真空槽が揃い、組み立てが終わり、電極電位の調整・最適化を進めている。3)昨年に引き続き、スイス放射光施設にて3週間のビームタイムを獲得。InSb表面価電子帯の光電子回折に現れるエネルギー損失成分のバックグラウンドについて詳細に調べた。その結果、価電子帯の元素別状態密度を解析することが可能になり、本成果のおかげで当研究室から最優秀学生賞受賞者を輩出するに至った。4)Auger電子回折の二色性と磁性単分子の表面構造に関する論文がそれぞれPhys. Rev. Lett誌に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
1.分析器開発で地磁気などによる影響を除去するための磁気遮蔽真空槽を作製した。収束電子銃を用いた分析器の電場調整について詳細に行っている。2.SPring-8での移設作業が無事終了し、光電子回折の実験を再開できるようになった。アップグレードでX線ビームが数10μmに収束し、微結晶試料の実験が行えるようになった。3.建設協力を行ってきたスイス放射光施設の光電子回折ビームラインのユーザーとしての利用も二年目に入り、InSbの価電子帯でのエネルギー損失電子回折のデータを系統的に取得してきた。
研究室のメンバー(研究代表者と配属学生3名、一期生1名は無事卒業)に新規に学生2名配属される予定である。この新体制で次の3課題に取り組む。1.小型分析器にて電子回折模様の測定実験を進める。分析器コントローラ、試料搬送システム、データ解析で研究室のメンバーで担当を分担する。2.SPring-8 BL25SU2次元光電子分光装置での実験長期利用課題が採択された。共同実験者から試料提供を受け、光電子回折の実験を進める。3.これまで測定・解析してきたデータが論文化されている。引き続き論文化にも注力する。
H26年度の成果を4月の国際会議で発表する旅費を捻出するために想定していたが、年度をまたぐため、繰り越しを行った。
上述の用途で生じる繰り越し額に相当する分をH27年度に使用する予定。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
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