研究課題/領域番号 |
25287076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河江 達也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30253503)
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研究分担者 |
稲垣 祐次 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10335458)
辻井 宏之 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (10392036)
田中 彰則 有明工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80274512)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / 強相関現象 / 強磁性 / 近藤効果 / 超伝導 / ブレークジャンクション |
研究概要 |
極低温度域において試料サイズをバルクからナノサイズまで精密に制御できるブレークジャンクション技術(MCBJ)と磁気抵抗測定を組み合わせることで、非磁性金属をナノサイズ化した際により出現する強相関現象の研究を行い以下の成果を得た。 我々はこれまでに非磁性金属PdワイヤをMCBJ法を用いてナノサイズ化することにより、約30nm以下のワイヤ径で常磁性から強磁性転移に転移することを磁気抵抗測定から見出していた。この一般性を探るため、常磁性金属Agに注目しMCBJ法と磁気抵抗測定を組み合わせその物性を探った。その結果AgでもPd同様、磁気抵抗効果・ヒステレシスがはっきり見られ、Agでも強磁性出現を強く示唆する結果を得た。 Sn微粒子実験で強磁性と超伝導の共存が報告され(PRB 77, 094508 (2008))、Snもナノサイズ化による強磁性出現が期待される。そこで極低温MCBJ実験を利用して超伝導金属の試料サイズを変えながら実験を行い、強磁性と超伝導状態の共存・競合効果について調べた。これまでの実験より、Snについては先行研究で報告されるような超伝導状態と磁性が共存・競合するような振る舞いは見られなかった。そこでd軌道が完全に埋まっていないバナジウムに注目し研究を行った。その結果、ワイヤ径が細くなると、ジョセフソン電流が急激に減少する、超伝導ギャップ内のアンドレーエフ散乱がはっきり見えない、微分伝道度に近藤効果を示唆するゼロ電圧異常が見られるなどが見られた。これら現象はバナジウムのナノサイズ化による磁気モーメントの誘起を反映する結果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブレークジャンクション技術(MCBJ)を用いてAgワイヤをバルクからナノサイズまで連続的に変化させて実験したところ、Pd同様、磁気抵抗効果・ヒステレシスがはっきり見られ、Agでも強磁性出現を強く示唆する結果を得た。また超伝導金属をナノサイズ化して磁性と超伝導状態の共存・競合効果について調べたところ、Snについては超伝導状態と磁性が共存・競合するような振る舞いは見られなかった。しかしd軌道が完全に埋まっていないバナジウムでは、ワイヤ径が細くなると、ジョセフソン電流が急激に減少する、アンドレーエフ散乱がはっきり見えない、微分伝道度に近藤効果を示唆するゼロ電圧異常が見られるなどが見られた。これら現象はバナジウムのナノサイズ化による磁気モーメントの誘起を反映する結果と考えられる。 以上の結果より、研究の目的達成に関してほぼ順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた実験をさらに他の金属に行うことでナノサイズ化による常磁性ー強磁性の一般性を探る。具体的には、Cu, Au, Ptなどの貴金属に注目して実験を行う。 超伝導状態と磁性の共存・競合効果について、さらに深く探るため転移温度が高いNb、d軌道がすべて占有されたPb, Inなどについて実験を行う。この系でジョセフソン電流のサイズ依存、アンドレエフ反射の出現電圧などを追跡することで、超伝導金属をナノサイズ化によることによる磁性発現の有無、d軌道電子の影響を解明する。 MCBJ法で作成したナノサイズ電極に水素を架橋することで、単分子デバイスを作成しその物性を探る。
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