研究実績の概要 |
非磁性金属Pdワイヤをブレークジャンクション法(MCBJ法)を用いてナノサイズ化することにより、約30nm以下のワイヤ径で常磁性から強磁性転移に転移することを磁気抵抗測定から見出した。さらに常磁性金属Agに注目しMCBJ法と磁気抵抗測定を組み合わせその物性を探り、Agでも強磁性出現を強く示唆する結果を得た。 d軌道が完全に埋まっていないVに注目し、超伝導と磁性の競合に注目し研究を行った。その結果、ナノサイズ化による磁気モーメントが誘起し、ジョセフソン電流の急激な減少、超伝導ギャップ内のアンドレーエフ散乱の消失、などが見られた。さらに超伝導転移温度以上の原子サイズコンタクト域では、近藤効果の出現を強く示唆するファノ共鳴が見られた。一方、d軌道が完全に占有されたPbでは上記のような異常な超伝導ギャップ内のアンドレーエフ散乱、ファノ共鳴などは見られていない。以上はJ. Phys.: Conf. Ser. 592, 012137(2015)で報告した。 Pdナノ電極への水素架橋実験を行った。その結果、水素は架橋されずT=18Kという低温でもPd表面から内部へトンネル効果によって拡散・吸蔵し、PdH0.6という非常に高濃度の水素化物を生成することを明らかにした。この結果はAppl. Phys. Lett, 106, 021605 (2015)に報告した。 水素トンネル現象の解明を目的に、Vibaring Wire法を用いた金属内の水素検出技術の開発を行った。それよりPdワイヤ(直径0.02mm)内への水素吸蔵による脆化、ワイヤの質量変化により、ワイヤの共鳴周波数が大きく変化することを明らかにし、この方法が水素の検出に有効をあることを示した。以上はApplied Physics Express 8, 095502 1-4 (2015)に報告した。
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