研究課題
本年度は、ディラック電子系の電子状態を明らかにするために、スピン分解光電子分光装置の最終調整を行った。とりわけ、分子線エピタキシー(MBE)装置とのマッチング調整を行い、単結晶MBE薄膜の作製と、スピン分解ARPESによるその電子状態評価を高効率で 行うことができるシステムが確立した。装置の最終調整と並行して、いくつかのディラック電子系の電子状態の決定を行った。二次元のシリコン正方格子を有する層状物質HfSiSでは、放射光を用いた精密なARPES測定によって、バルクバンドに起因したディラックコーン的バンド分散とダイアモンド形状の線ノード構造を見出すとともに、理論的にこれまで予想されていなかった「一次元ディラックノードアーク構造」を観測することに初めて成功した。カイラル構造を持つテルル単結晶においては、ディラック電子と同様に質量ゼロの電子(ワイル電子)が作るワイルノードを観測し、価電子帯とフェルミ面を形成するバンドがスピン分裂をしていることを明らかにした。これらの結果から、観測された特異なディラック電子構造の発現には、グライド鏡映対称性やらせん対称性といった結晶対称性が関連していると結論した。鉄系超伝導体FeSeの原子層薄膜においては、アルカリ金属の一つであるLiを蒸着して、電子相図を精密に決定することに成功した。その結果、ノンドープ領域では、鏡映対称性によって保護されたディラックコーンで特徴付けられるネマティック状態が安定である一方で、電子をドープすると、この秩序が壊れ40K以上の高温超伝導を示す相が出現することを明らかにした。このことから、FeSe薄膜の高温超伝導発現には、ドーパントの種類はあまり関係なく、電子ドープそのものが効いていると結論した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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