研究課題
本研究課題は、三角格子系における特異物性に着目するものである。磁性の分野で研究されてきている幾何学的フラストレーション効果を背景として、三角格子上強相間超伝導においては、通常のd波クーパー対が不安定となり、トポロジカル構造等の内部構造を持つ特異超伝導が実現する可能性を見据えていた。研究代表者は平成26年度に異動があり、新研究室の立ち上げを行っていた。平成26年度に立ち上げた、9Tまでの磁場下における圧力セル回転機構付きNMR実験システムを用いて、平成27年度においては三角格子量子磁性体EtMe3P[Pd(dmit)2]2の圧力下超伝導状態(ゼロ磁場におけるTc~5 K)における13C-NMR測定を行い、超伝導波動関数構造の追求を行った。まずNMR測定回路・スペクトル測定手法の改良を行うことで、通常のNMR測定に比べ印加電力を2桁程度落とし試料発熱を十分に抑えた状態でのナイトシフト測定・緩和率測定を可能とした。その結果、以下のような予想を超えた結果が現在見出されつつある。この系においては超伝導状態においても、ナイトシフトは減少を示さず、パウリ常磁性と同等のシフトが残る振る舞いが検出された。この結果は、本物質の三角格子超伝導において、単純なd波の超伝導が不安定となり、 p波あるいはf波の内部構造を伴うトリプレット超伝導が実現している可能性を示すものである。これは、従来知られているトリプレット超伝導転移温度を大きく塗り替える新トリプレット超伝導物質の議論となり、超伝導物理学・トポロジカル物理学上に大きな衝撃を与えるものとなる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Rev. Lett.
巻: 115 ページ: 077001, p1-5
10.1103/PhysRevLett.115.077001