研究課題
非磁性結晶場基底状態を持つカゴ状化合物PrTi2Al20の研究を継続した。前年度までの研究から、[111]方向の磁場下では磁場の強度に関わらず2K以下の低温で3z2-r2型の強四極子秩序が発生すること、一方[100]方向では磁場が2テスラ以下の場合は2Kで相転移が起こるのに対し、2テスラ以上の磁場では相転移ではなくクロスオーバーに変化することが見出されていた。平成29年度は、更に[110]方向の磁場下での詳細なNMRおよび磁化測定を行い、磁場方向に依存する異方的な磁場温度相図を決定した。その結果明らかになった[100]および[110]方向の磁場下における磁場誘起相転移のメカニズムを理解するために、非磁性2重項基底状態を持つ結晶場ハミルトニアンと磁気ゼーマン相互作用の下で、四極子間相互作用を平均場近似で取り扱うことにより、強四極子秩序状態の間で磁場誘起相転移が発生する条件を理論的に検証した。この場合、秩序変数は3z2-r2型およびx2-y2型を基底とする2次元のベクトルとして表現される。この理論モデルの解析の結果、磁場誘起相転移が発生するためには、四極子間相互作用が非線形な磁場依存性を持つことが重要であることが明らかとなった。また量子スピンアイス系の候補として注目されているパイロクロア酸化物Pr2Zr2O7の研究を継続した。量子スピンアイス状態において、Prサイトは互いに直行する2種類のイジング異方性を有する強磁性スピン鎖を形成するが、[110]方向に磁場を印可すると、半数が磁場によって完全に偏極するのに対し、残りの半数が磁場の影響を受けない1次元スピン鎖としてふるまうと予想される。実際に[110]方向に磁場を印可してZrサイトの核磁気緩和率を測定した所、5K付近で緩和率が極小を示した後、温度の低下とともに緩和率が増大するという、量子臨界的な振る舞いが観測された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Letters
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http://masashi.issp.u-tokyo.ac.jp/