結晶群のうち、特に点群と半並進の組み合わせで作られる非共形な空間群によって守られたトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の研究を行った。非共形な空間群には、鏡映と鏡映面内の半並進によって作られるグライド対称性、回転と回転軸方向へ半並進の組み合わせによって作られる螺旋対称性が含まれ、多くの結晶が非共形空間群で対称であることが知られている。一方、従来の研究では、単なる回転や鏡映などの点群のみが結晶の対称性として考慮されており、非共形な空間群がどのような特徴をもつトポロジカル相を実現するか、理解されていなかった。我々は、非共形な空間群によって、半並進の方向の運動量空間に捻じれ構造が入り、運動量空間においてメビウス輪の構造を持つ表面状態が実現されることを明らかにした。更に、K理論を用いて、位数2の非共形な空間群によって守られたトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の完全な分類を行った。
また、キャリアを注入したトポロジカル物質の超伝導状態の研究として、ディラック半金属と呼ばれる新しいトポロジカル物質の超伝導状態の研究を行った。ディラック半金属とは、4成分ディラックフェルミオンで記述されるギャップレス励起を持つ3次元物質で、Cd3As2がその典型物質として知られている。近年、Cd3As2が低温・圧力下で超伝導体となることが示され、その性質に注目が集まっている。我々は、ディラック半金属が、ディラック点の周りに特徴的な軌道混成の構造をもち、そのため、ペアリング相互作用によっては、従来型のs波超伝導状態よりも、スピン三重項超伝導状態が実現されやすいということを発見した。さらにスピン三重項超伝導状態がトポロジカル結晶超伝導状態であることを示した。
また、超伝導体・超流動体におけるマヨラナ励起と対称性の関係性を、超流動3Heを中心に包括的に調べ、3Heの持つ高い対称性が豊富な構造をもたらすことを明らかにした。
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