研究課題/領域番号 |
25287087
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
岸根 順一郎 放送大学, 教養学部, 教授 (80290906)
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研究分担者 |
秋光 純 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80013522)
戸川 欣彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415241)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カイラル磁性体 / スピン位相 / 量子伝導性 / 有限サイズ効果 / トポロジー / 非線形性 / 非対称性 / スピントロニクス |
研究概要 |
本研究の目的はカイラル磁気秩序の構築方法、カイラル磁気秩序特有の機能の創出に関する基礎学理を確立し、これを実現することである。25年度は当初の計画通りに研究を進め、以下の成果を得た。(1)六方晶カイラル空間群に属する遷移金属層間化合物T1/3MX2 (T=遷移金属、M=遷移金属、X=カルコゲン)の電子状態を2サイト模型に基づいて解析し、系の有効理論導出に成功した。(2)非対称結晶構造に潜む非線形磁気パターンの探索を進めた。その結果、カイラルソリトン格子(ストライプ)、2次元渦(ボルテックス)、3次元渦(スキルミオン)、種々の欠陥構造といった様々な非線形パターン形成を統一的に記述することに成功した。さらに、繰り込み群解析によって臨界揺動を議論するための定式化を行った。 3)カイラル磁性体に特有の機能として磁気情報転送機能がある。この機能を実験的に実現するため、試料のメサ・ブリッジ構造化を推進した。その結果、有限サイズ特有のトポロジカル効果を見いだした。(4)有限サイズカイラル磁性体における「トポロジカル磁化跳躍現象」を理論的に見いだした。この効果は、有限サイズカイラル磁性体を用いた新しいタイプの磁気メモリ素子が可能であることを示唆している。(5)ローレンツ電子顕微鏡法と自己開発した小角電子線散乱法を用い、実空間および逆空間において、カイラル磁気秩序に特徴的な磁気構造(スピン位相構造)を系統的に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請段階では予期しなかった「有限サイズカイラル磁性体におけるトポロジカルな磁化の跳躍現象」見いだした。この効果は実験的に実現することが可能であり、実際に理論計算の結果と整合するデータが得られ始めている。この効果を用いると、カイラル磁性体を用いた新しいタイプの磁気デバイス(メモリ素子)の実現が可能となる。本研究の成果は、Jun-ichiro Kishine, I. G. Bostrem, A. S. Ovchinnikov, and Vl. E. Sinitsyn, Topological magnetization jumps in a confined chiral soliton lattice, PHYSICAL REVIEW B, 89, 014419 (2014)として公表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年4月時点で、申請時の計画以上の進展が得られている。26年度はその成果をベースにして、特に理論研究と実験研究との結合を推進する。特に有限サイズ効果については応用上も重要な未知の現象が隠れている可能性が極めて高い。無限系についてのこれまでの知見を結集し、有限サイズ系の特質を発掘して行く。また、パターン形成理論構築の過程で得られた有効模型に対して繰り込み群解析を適用するなど新たな方向性も探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初25年度に購入予定であったワークステーションについて、数値計算の規模を考慮してスペックの観点でやや落ちるデスクトップパソコンを購入することにした。この結果、約30万円の余剰が生じた。さらに、ロシアへの海外出張の期間を当初予定より短く設定したために約30万円の余剰が生じた。これらの結果655,957円の余剰が生じ、次年度に繰り越すことにした。 今年度は、本計画代表者(岸根)が中心となって「カイラル磁性体の物理」についての国際ワークショップを開催する予定である。このワークショップでは、本研究成果の総括的なレビュー講演を行うほか、海外より当該分野で活躍する数名の研究者を招聘する。そこで、25年度分からの繰越金をそのための招聘旅費の一部に充てる。
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