研究課題
本研究は、微視的模型における電荷自由度および磁気自由度の動的応答を求めることを目的としている。これまで「マルチフェロイックスの物理」の主要な研究対象であった「らせん磁性体」のみならず、様々な磁気秩序系・スピンテクスチャ系・界面接合系などにも対称をひろげたうえで、これまでに知られていない電荷-磁気自由度間の有効的な相互作用(電磁記事相互作用)を理論的にたんさくするとともに、これらの相互作用により実現する新しい動的電気磁気現象を予言・設計することを目的とする。本年度は、動的電気磁気現象を示す新しい系として、キラルな結晶構造を持つ絶縁性磁性体Cu2OSeO3を対象に研究を進めた。この物質の薄膜試料において探針電極により局所的に電場を印加することで、トポロジカルな渦状磁気構造であるスキルミオンを書き込めることを理論的に実証した。さらに、その物理的なメカニズムとして、電気磁気結合を通じた電場による局所磁化反転に基づく機構を明らかにした。この成果をApplied Physics Letters誌やAdvanced Electronic Materials誌に発表した。さらに、これらの成果を含む磁気スキルミオンに関する書籍やレビュー、解説記事を執筆し、発表した。さらに、スパイラル磁性マルチフェロイクスの典型物質であるTbMnO3を対象に、磁場印加による強誘電分極の90°フロップ現象の動的プロセスを研究し、このフロップ現象が従来素朴に信じられていた「確率的プロセス」ではなく、「決定論的プロセス」によって引き起こされることを明らかにした。この成果は、スパイラル磁性マルチフェロイクス物質のデバイス応用に道を拓く画期的な成果として、Science誌に掲載された。さらに、詳細な物理機構や実験結果への適用に関する理論研究を進め、その成果をPhysical Review B誌に発表した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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