研究課題
平成25,26年度に装置開発や申請段階で想定した物質群の先端磁気共鳴計測による電子対相関研究の進展が行えたので,平成27年度は,この手法論を用いて新規な物質系の電子物性研究への展開を行った。1.自己キャリアドープTTFCOO系ならびそのπ拡張系TTPCOO系に対して強磁場を含む先端電子スピン共鳴,固体広幅NMR測定ならびに量子化学計算を行った。その実験結果の詳細な解析から,伝導電子スピンの起源,系の次元性ならびにキャリアの遍歴性について明らかにした。これらの結果は国際学会での発表と共に国際誌へすでに掲載されている。2.電荷やスピンの秩序化など電子物性の観点からも興味を持ち,酸素架橋ルテニウム二核混合原子価錯体について磁気共鳴法による電子物性研究を行った。SQUIDやESRでは明瞭な異常は観測されないが,1H-NMRスピン格子緩和率では33K近傍に顕著なピークを示す。室温で等価であった電子対が低温で不均化,つまり酸化物や有機導体系で観測されるような電荷秩序転移(電子対の対称性の破れ)が起こっていることが分かった。これらの結果は国際学会での発表と共に国際誌へ投稿済みである。加えて,当初から研究を行っている一次元有機導体 (TMTTF)2Br系で新たに逐次反強磁性転移を発見した。さらにTMTTFを重元素のセレンで置換した(TMTSF)2ClO4塩では強いスピン軌道相互作用に起因すると思われるESR共鳴吸収サテライトを観測している。これらの研究は物性物理の骨幹に関わるもので,新たに芽吹いたユニークな学術研究でとして新規な課題として進めたい。本課題成果の公表をうけ,平成27年には招待講演が2回あり国際学会での発表も行っている。すでに,著名誌を含む国際誌にも7件が掲載済みである。加えて数件投稿準備中である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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