研究課題/領域番号 |
25287094
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
社本 真一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主席 (90235698)
|
研究分担者 |
樹神 克明 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (10313115)
梶本 亮一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (30391254)
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (30396519)
前川 禎通 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, センター長 (60005973)
石角 元志 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業, 東海事業センター 利用研究促進部, 技師 (90513127)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中性子散乱 / スピン流 / YIG / 鉄系超伝導体 |
研究実績の概要 |
これまでJ-PARCの物質・生命科学実験施設MLFで、ダイレクトビームまわりに広くディテクターが配置されているパルス中性子非弾性散乱装置群の中で、まず高強度のBL01「四季」と高温分解能のBL14「アマテラス」を用いて、非平衡状態として、フェリ磁性体のイットリウム鉄ガーネット単結晶試料YIGのおおよそ[111]方向に温度勾配を最大34 Kまでつけて、3.5 meVと2 meVの低エネルギーで非弾性散乱実験を行った。測定する単結晶試料はすでに単結晶が得られているYIGである。YIGは鉄サイトの磁気モーメントが大きく、異方性が小さいことから低エネルギーでの測定に有利である。これまでのところ、高温側で強度が上昇する傾向があるが、その差は小さくいずれも誤差範囲内で結論は出せていない。一方で、磁化曲線から1kOe以上で磁化が飽和し、磁壁がなくなる。この磁壁の存在が、スピン流を抑制している可能性があることから、磁場下での実験を今後行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YIG単結晶試料の育成に成功し、得られた結晶を無事に温度勾配下で測定できるようになった点は、大変順調である。特に競争の激しいJ-PARC/MLFの課題採択で、非弾性散乱装置として、四季、アマテラス、DNAと順調にビームタイムを確保しており、幅広いエネルギーでのスピン波の情報が得られた。予算も基金の制度を利用して、低温スティックを製作することができ、温度勾配をつけた実験も順調に行うことができた。さらに超音波をかけた実験でも、長さ4 cmほどの大型結晶でも順調にエコーを室温でも観測することができ、実際に試料中に入っている超音波の量を確認することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
3台の中性子非弾性散乱装置を用いて実験を行ってきた結果として、磁壁の問題や、結晶軸方向の異方性の問題の可能性があることがわかってきた。今後、これらの問題点を克服するために、ネオマックスの磁石を結晶近くに設置して、磁壁をなくした実験を行う予定である。またこの一連の実験研究で、YIGのスピン波について、低エネルギーの20 micr eVから高エネルギーの170 meVぐらいまでの非常に幅広い情報が得られた。この幅広いエネルギー領域にスピン波が広がっていること自体が個人的には不思議に感じているが、この結果についても成果としてまとめていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
製作を予定していた物品(温度勾配用クライオスタット)が、当初想定していた金額より安価で購入できたこと、また出張にかかる費用が想定以下だったため、基金において次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品等、実験を進めるために必要な物品の購入に充てる。
|