研究課題/領域番号 |
25287103
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
神門 正城 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (50343942)
|
研究分担者 |
PIROZHKOV Alex 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (00446410)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 高強度レーザー / コヒーレント軟X線 / レーザー・プラズマ相互作用 / 相対論的プラズマ / 非線形プラズマ波 |
研究概要 |
H25年度は、以下の3つの項目を実施した。 (1) レーザーシステムのポンティングスタビリティーを向上させるために、振動の要因となっていたレーザー結晶の冷却システムの改造を行った。冷却システムは、ヘリウム冷凍機からの振動が光学定盤上に設置されており、光学機器等への振動が伝播する構造であったが、これを光学定盤から切り離すことで安定性を向上させた。ポインティング揺らぎを9-16μradから2.2μradへと低減することを確認した。 (2)極端紫外光の光源サイズを計測するためのイメージング装置を構築した。このシステムは、非周期型多層膜付きの球面鏡をほぼ同軸に用いて、CCDなどの撮像素子上に光源の拡大像を結像させるものである。今回、ほぼ同軸への入射(2度以内)と5倍の倍率を用いた。撮像素子に、LiF結晶を用いることで、レーザープラズマ相互作用からの電子カスプからの極端紫外光を計測し、空間分解能 1μm以下であることを確認した。 (3)この装置を用いた飛翔鏡の集光実験を行った。飛翔鏡実験では、中心波長800 nm、パルス幅30 fsのパルスを2つ(高強度のドライバー光とソース光)に分岐させ、ヘリウムガスジェット中で対向衝突するように調整を行った。良好な集光パターンが得られ、集光径は2つのレーザー光に対して4σ法にて30 μm、45-50 μmであった。この2つのパルスをプラズマ中で衝突させるようにアライメントする新しい方法を考案した。これは、ソース光の透過光を用いて相互作用点をイメージングするもので、ソース光のビーム径を絞ることでシャドウグラフとして作用する。これを用いて飛翔鏡からの反射光探索を行ない、19-25 nmの準単色構造の反射光を観測した。さらに、(2)で開発した方法での飛翔鏡からの軟X線の集光径計測を実施し、現在データの解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定の計測装置を組み上げ、リアルタイム計測を行うことができる装置を構築することができた。予備試験により本装置は予定通りの分解能を持つことを示すことがわかった。撮像素子としてLiF結晶を用いた場合は、当初目標に置いていた空間分解能 1μmを達成できることができた。この成功の要因として、撮像素子としてバックアッププランのLiFを予め検討し、準備していたことが考えられる。また実験が概ね当初の計画通りに進捗したことも要因の一つに挙げられる。これらは今までの実験キャンペーンを通して、システムのトラブルシュートをが十分に行えていたことに負うところもあると思われる。 また、レーザーの安定度改造も、当初の計画通りに向上させることができた。これは予め問題点を予備試験により発見できていたことが大きい。 初年度より飛翔鏡実験を行ない、反射光を観測でき、X線像の取得を試みることが出来た点は、大きな進捗であると考えている。特に、新しいアライメント手法を開発できた点で、飛翔鏡実験で最も困難なアライメント作業を確実に実施て点が成功の鍵であった。また、同時に、衝突は達成されているにも関わらず、信号の繰返し再現性に問題があることがわかった。今後、これらの不安定性の原因を探り、解決していくことが重要である。
|
今後の研究の推進方策 |
飛翔鏡からの極端紫外光の光源サイズを計測する装置は一通り完成し、レーザープラズマ相互作用により発生する相対論的高次高調波からの軟X線源サイズが、LiF結晶を用いて1μm以下であることを示し、目標とする空間分解能を持つことを示すことができた。詳細なシミュレーションによれば、予備試験でのレーザープラズマ相互作用からの軟X線は 200 nm以下であることが示唆され、このためにさらに高い分解能を持つシステムを目指す。システムの設計には光学設計ソフトウェアを用いる。 飛翔鏡実験では、予備試験により、飛翔鏡自身の再現性の向上を行う必要があることが判明した。このため、3つの方策:レーザーの安定化とガスターゲットの制御性向上、飛翔鏡の計測、を実施する。レーザーの安定化は、今年度実施したように地味な作業ではあるが、集光径の向上、パルス波形の安定化などを行っていく。改善には至らなくとも、少なくとも原因を明確にしたい。ガスターゲットの制御性は、大阪大学で開発された磁場によるプリプラズマ制御、衝撃波による密度勾配付きガスターゲットの生成を試みる。これらにより、飛翔鏡の生成位置を制御するこを目標とする。密度勾配付きの3番目は野心的なテーマではあるが、やはり実際に生成される構造を観測することが本質に迫るための手法と再認識したので、最近米国で実施された周波数領域ストリークカメラなどの手法を短波長化するなどの高度化を検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
振動対策結晶ホルダーの製作は調査により当初予定よりも簡易な構造を採用でき、結果として契約差額が発生したため。 飛翔鏡の計測のための装置開発費用としてH26年度以降に使用する。
|