研究概要 |
本研究の目的は、多くの細胞が作り出す巨視的な形態形成の力学的機構を明らかにすることである。そのために、3次元培養環境においてシスト構造を形成する多細胞コロニーに注目し、細胞の極性を決定する因子の同定、細胞と細胞の接着力、細胞と基質間の接着力、細胞内の張力、細胞内の情報蓄積機能を定量的に評価する方法を確立する。さらに、これらのバランスの観点から形態形成の協同機構を解明する。細胞運動方向の3次元空間的な相関長の時間変化を評価する。また、細胞集団の周辺の基質ゲルを染色し、その蛍光画像の局所変形から画像相関法を用いて細胞内および細胞間、細胞外基質における応力分布を推定する解析プログラムを確立させる。細胞内の情報の蓄積効果は走査型プローブ顕微鏡によって評価する。数値計算によって協同機構モデルを構築する。本年度は、基質の種類に依存して、上皮細胞の極性が決定されることや細胞間の接着力が変化することを発見し、投稿論文に発表した(2014 T. Mizutani, K. Kawabata,et al., Histochem Cell Biol)。また、上皮細胞集団が新たな細胞-細胞間接着を形成する際の力学量を原子間力顕微鏡で測定することに成功している(2013 R. Tanaka, T. Mizutani, K. Kawabata, et al., Jpn J Appl Phys Conf Proc)。これらの知見は、多細胞がマクロな形態を形成する際の数理モデルを構築する上で重要な情報である。
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