研究課題/領域番号 |
25287107
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
藤井 修治 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40401781)
|
研究分担者 |
好村 滋行 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90234715)
高橋 勉 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20216732)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 構造レオロジー / 構造転移 / 欠陥ダイナミクス |
研究実績の概要 |
ラメラ相がずり流動下で示す非平衡構造転移と構造欠陥のダイナミクスとの関係を調べることにより、構造転移の起源を明らかにすることを目的に研究を行っている。 ブロック共重合体Pluronic P123のリオトロピック・ラメラ相(Pluronic P123+ブタノール+水の3成分系)は、溶媒組成(水に対するブタノールの割合)を変化させることによって、異なる非平衡構造転移を示す。本年度は、P123濃度を固定し、溶媒組成を変化させることにより同系の動的相図を作成し、臨界値の物理的意味を考察した。動的相図の作成には、小角散乱法(X線、光)、流動複屈折、粘度のずり速度依存性をもとに作成した。 低ブタノール濃度では、ラメラの配向転移のみが観察され、ブタノール濃度を増すにつれラメラ/オニオン転移が観察された。オニオン相が観察された後、ずり速度をさらに増すと、オニオン相は破壊され、平行配向のラメラ相が再び現れ、さらに高ずり速度側において平行配向から垂直配向への構造転移も観察された。 ラメラ相の配向転移、オニオン相からラメラ相の再形成が生じる臨界ずり速度について、いくつか理論的予測がある。実験で観測されたこれらの構造転移の臨界ずり速度は、理論予測と一致した。さらに臨界ずり速度をずり応力値へ変換すると、配向転移とラメラ相再形成の臨界ずり応力がそれぞれ一致した。複数の構造転移が臨界ずり応力で整理できることは粘性応力とラメラの弾性とのバランスが構造転移を誘起すること、つまり構造転移の起源が同一であることを示唆する。欠陥のダイナミクスが強く影響するオニオン相形成と異なり、高ずり速度領域で見られる複数の構造転移は、同一のメカニズムによって発現することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラメラ相とスメクチック相の構造レオロジーに関して総説を出版し、欠陥ダイナミクスの実験を開始した。動的光散乱測定では欠陥運動のタイムスケールに相当する緩和モードが検知されていることから、当該手法の有用性も確認されている。同手法を様々な系に適用することも可能であり、欠陥の可視化と組み合わせることによって、欠陥が関与するレオロジーについて、より詳細な議論が可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、特にブルー相の構造レオロジーに集中して取り組む。ブルー相はその欠陥によって構造が特徴付けられ、レオロジー挙動との密接な関係が示唆されている。欠陥ダイナミクスをもとにレオロジー、構造転移を考察するのに適した系である。 これまでに報告されているブルー相を発現する系を用い、 1.線形・非線形レオロジー測定 2.テクスチャー観察と欠陥構造の可視化 3.構造転移への流動場効果 の実験を行う。線形粘弾性挙動とテクスチャーや欠陥構造の可視化をもとに、ブルー相における欠陥ダイナミクスを明らかにする。また構造転移点近傍での非線形レオロジー挙動からも、欠陥ダイナミクスが構造転移に及ぼす影響を明らかにする。さらに、ずり流動場によるブルー相の非平衡構造転移を探索し、欠陥が関与するレオロジーの概念を、スメクチック相からキュービック相にまで広く展開する。
|