研究実績の概要 |
平成27年度の本研究の成果概要は以下のとおりである。
1. 平成25,26年度に研究を行った非晶性ポリアミド共重合体に関して、これまでの試料とは鎖長の異なるPA10,6とPA10,Iの共重合体を用いて、薄膜を作成し、電極分極およびα過程のダイナミクスを誘電緩和測定により調べた。その結果、膜厚の低下とともに、ガラス転移温度の低下とフラジリティの増大は観測されたが、charge carrierの拡散係数のintrinsic な増大は観測できなかった。つまり、拡散係数の鎖長依存性はPA66/6Iとは異なっており、鎖長依存性の存在が結論できた。現在、より詳細な解析を進めており、今後のさらなる研究の展開が期待される。
2.ポリアミド系高分子で観測される電極分極の性質をより明確にするために、イオン液晶と典型的な液晶性物質に対する誘電緩和測定を行った。イオン液晶として、イミダゾリウム系のイオン液晶で、1-methyl-3-alkylimidazolium tetrafluoroborate [Cnmim]BF4を用い、典型的な液晶としては、N-(4-Methoxybenzylidene)-4-butylaniline (MBBA)を用いた。これらの系に対して、誘電緩和測定を実施し、電極分極を詳細に調べた。その結果、分子の配向性とcharge carrierの拡散運動が密接に関係していることが明らかとなった。ただ、相転移に伴うモルホロジー変化に起因した種々の要因をどのように評価すべきか、さらに、界面ダイナミクスとの関係の解明は今後の課題であることが明らかとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
不足しているデータを取り直すとともに、国際会議において研究成果の発表を行い、本研究により得られた成果を国際的に発信する。具体的な国際研究集会としては、1) EMN Meeting on droplets 2016, 2016.5.9-13, San Sebastian, Spain, 2) The XVIIth International Congress on Rheology (ICR2016), 2016.8.8-13, Kyoto, Japan, 3) 9th International Conference on Broadband Dielectric Spectroscopy and its Applications, 2016.9.11-16, Pisa, Italy. を予定している。
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