研究課題/領域番号 |
25287109
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 利典 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70222015)
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研究分担者 |
篠原 雅尚 東京大学, 地震研究所, 教授 (90242172)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スロースリップ / 海底圧力計 / シミュレーション / 房総沖 / 海底地殻変動 / プレート境界構造 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、房総沖スロースリップの解明のために以下のことを行った。 1.海底圧力計を用いた房総沖スロースリップ域の観測と解析 房総沖スロースリップ海側(すべりの南東側)のすべりは不明瞭であるので、すべり領域を正確に把握するために、昨年度に引き続き、南東側に海底圧力計を配置して観測を継続した。8月に地震研用船を用いて5台について回収し、新たに4台を設置した。また、平成27年度に回収したデータについて再解析を行った。昨年度までは、2地点の差を取ることで変動を推定していたが、今回は陸上GNSSに用いる方法を応用した。それは圧力計データに線形トレンドと季節変動、2011年東北地震の影響(対数関数で近似)、スロースリップによる変動(ステップ関数)を組み込んだ関数をフィッティングし、スロースリップによる変動の推定を試みた。その結果、観測精度は約1cmであり、スロースリップ領域に近いKAP3観測点で2.4㎝の隆起の変動が推定された。この結果は、海底圧力計による数cmの変動の世界初の確実な観測例である。この解析結果については、10月の地震学会秋季大会で発表し、Geophysical Research Lettersに論文として発表した。また、観測精度向上に関しては、既存の機器に原子時計を組み込んだ。 2.房総沖スロースリップを再現するためのシミュレーションモデルの開発 今年度は、昨年度に引き続き、データ同化に必要な土台となる構造の決定を進めた。人工地震観測の1測線下から見つかったPHS上面からの反射波について研究を進め、強い反射がスロースリップ付近と沈み込んだ海山付近にあること、その2つの間には強い反射がないことがわかった。これは、スロースリップ付近で遅い物質がプレート境界にあることを示唆している。この結果は、4月のヨーロッパ地球科学連合、10月の地震学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海底圧力計を用いた房総沖スロースリップ域の観測と解析、シミュレーションモデルの開発とも、ほぼ予定通り研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
海底圧力計観測は28年度に設置した海底圧力計の回収を行う。29年度は夏秋に地震研用船の航海が予定されている。圧力計データの解析では、スロースリップが起きた時期以外のデータについても解析を行う。シミュレーションモデル開発については、構造の研究について、他の測線下からの反射や測線間のプレート境界からの反射について研究を進め、得られた結果をまとめて論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データや構造解析計算に使うワークステーションが予定より安かったこと、観測が期間が短かく寄港地も東京湾周辺だったので旅費があまりかからなかったことのため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、消耗品(データ保存用ハードディスクなど)や学会発表のための旅費、論文発表経費などに充てる予定である。
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