研究課題/領域番号 |
25287111
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
船守 展正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (70306851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SiO2ガラス / 相転移 / 中間状態 / X線小角散乱 / X線吸収微細構造 |
研究実績の概要 |
本研究の3年目にあたる平成27年度には、高エネルギー加速器研究機構・放射光科学研究施設ビームラインBL-18Cにおいて、高圧下その場小角X線散乱(SAXS)・X線回折(XRD)同時測定装置を高度化してSiO2ガラスの測定を行った他、ビームラインAR-NE5Cにおいて、高圧下その場X線吸収微細構造(XAFS)分光装置の立ち上げを行った。BL-18Cの実験では、SiO2ガラスの4配位⇔6配位の構造変化の中間状態として、4配位と6配位のナノメートルスケールのドメインが共存することを示す決定的な証拠(SAXSのデータ)を得た。ガラスやメルトの振る舞いを理解する上で極めて重要な発見であるので、現在、論文としてまとめる準備を急いでいる。また、地球惑星科学とは直接的には関係しないが、本研究で整備した装置を利用して平成26年度に行ったイオン液体の高圧下その場SAXS測定の結果が論文として学術雑誌に公表された。AR-NE5CのXAFS分光のための整備は順調に進んでおり、現在までに、大型プレス装置を利用した10万気圧領域までの測定が可能になっている。従来からのXRDとの切り替えは10分以内で可能である。現在、液体の構造に関する情報をXRDとXAFSの二種類の方法で測定して比較することを目的とした実験を進めている。液体を対象とした実験は難易度が高いので、複数の方法を併用して得られた情報の整合性を確認することは重要である。また、XAFS分光により、ケイ酸塩のメルトやガラスの化学を理解するための実験も計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SiO2ガラスの4配位⇔6配位の構造変化の中間状態として、4配位と6配位のナノメートルスケールのドメインが共存することを示す決定的な証拠を得ることができた。研究グループとして5年以上の期間にわたって取り組んできた課題に結論を出すことができたことは極めて大きな進展といえる。一方、メルトの測定という観点からは十分に研究が進展しているとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年4月1日付で放射光施設に異動し、その環境を活かして、XAFS分光のための整備を開始している。これを更に高度化し、液体の構造のより詳細で正確な理解やケイ酸塩のメルトとガラスの化学の理解を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年4月1日付での異動後、実験スペースを確保できたのは翌年(平成28年)になってからであった。このため、そこで使用する装置の整備を進めることが困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
CO2レーザー加熱装置およびXAFS分光装置の高度化を早急に進める。
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