研究課題
本研究では、平成27年度までに、SiO2ガラスの二相混合状態の存在の実証という大きな成果が得られた。これは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)・放射光科学研究施設(PF)のビームラインBL-18Cに設置した高圧下その場小角X線散乱装置の高度化により、世界で初めて、SiO2ガラスの4配位⇔6配位相転移において、二相のサブナノメートルスケールのドメインで構成される中間状態を確認したものである。平成28年度は、この結果を論文にまとめて公表することを最優先に進め、8月に学術雑誌に投稿したが、現在も改訂稿のレビューが続いている。当初、平成28年度を本研究の最終年度として予定していたが、この重要な成果が正式な形で公表できていないこともあり、本研究の1年間の延長を申請した(延長申請は承認されている)。小角X線散乱を利用した新しい試みとして、水ガラス(ケイ酸ナトリウム水溶液)や含水ガラスを対象とした実験を開始している。無水のガラスには存在しない大きなスケールの不均質が検出されるなど、新しい知見が得られつつあるので、延長期間を利用して実験を本格化させ、理解を深める計画である。一方、平成27年度にKEK・PFのビームラインAR-NE5Cに整備したXAFS(X線吸収微細構造)分光システムを利用し、従来からのXRD(X線回折)システムと組み合わせて、高温高圧下その場XAFS-XRD複合測定を実施することで、液体ヨウ素の分子解離と金属化に関する研究を進めた。現在、実験結果を論文にまとめて学術雑誌に投稿中である。今後、システムを高度化して、ケイ酸塩を対象とした実験を実施する計画である。これまでのSiO2ガラスに関する一連の成果は、日本セラミックスの協会誌に解説記事(依頼原稿)として掲載される予定である。
2: おおむね順調に進展している
高エネルギー加速器研究機構・放射光科学研究施設の二つのビームライン(BL-18CとAR-NE5C)において開発してきた高圧下その場小角X線散乱測定と高温高圧下その場X線吸収微細構造分光-X線回折複合測定のシステムが順調に稼働し始めたことは極めて大きな進展といえる。一方で、それらを利用して得られた成果が未だ論文として公表できていない点は不十分と言わざるを得ない。(現在、二編の論文を投稿中である。)
投稿中の二編の論文を早期に公表できるよう努力する。また、含水系のケイ酸塩の高圧下その場小角X線散乱測定、希土類元素(およびその化合物)の高温高圧下その場X線吸収微細構造分光-X線回折複合測定を進める。
平成27年4月に現所属機関に異動後、特に平成28年度より、所属機関が運営する放射光施設の将来計画を推進する役割を担うことになった。大学共同利用に供される施設の将来計画は個人研究に優先するとの考えから本研究のエフォートを下げざるを得なかった。
主に放射光実験の消耗品費や成果公表のための経費として使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
セラミックス
巻: 52 ページ: 352-356
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 257 ページ: 230-239
10.1016/j.pepi.2016.06.009
KEK放射光 Conceptual Design Report ver. 1
巻: N/A ページ: 211-213
巻: N/A ページ: 222-223