本研究では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)・放射光科学研究施設(PF)のビームラインBL-18Cに設置した高圧下その場小角X線散乱装置を高度化することで、SiO2ガラスの4配位⇔6配位相転移において、4配位相と6配位相のサブナノメートルスケールのドメインからなる中間状態の存在を実証することに成功した。この重要な成果を論文として発表することを最優先の目標として、1年間の延長を行ったが、現在もピアレビューが継続している。この間、成果の重要性をより明確にするため、追加実験として、相転移中の光学顕微鏡による観察も行っている。結晶の相転移の際には光学的な不均質が観察されるが、ガラスの相転移では観察されないことが示された。これにより、相転移中、ガラスは光学的には均質な状態を保つが、より微視的には二相混合の中間状態をとるという描像が得られた。また、二相混合の中間状態をとることが実証されたことを踏まえ、ガラスの相転移のカイネティクスをモデル化する試みを行っている。現在、モデルの細部を詰める検討を行っている。これらのガラスの相転移に関する重要な成果については、未だ論文として発表できていないが、高圧下その場小角X線散乱装置を他分野の研究者に利用してもらうことを進め、共同研究により、この1年間でイオン液体を対象とした2編の論文が出版されている。さらに、KEK・PFのビームラインAR-NE5Cにおいて、新規に整備したX線吸収微細構造分光システムと従来からのX線回折システムを利用した複合測定により、液体ヨウ素の分子解離と金属化に関する研究を進めてきた。実験データの逆モンテカルロモデリングを行うことで、約4万気圧で、隣接分子との結合の繋ぎ替えの頻度が急上昇し、分子解離することなしに電子状態の変化が起こることが明らかになった。液体ヨウ素の成果については、既に論文として発表されている。
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