研究課題/領域番号 |
25287112
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古本 宗充 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80109264)
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研究分担者 |
寺川 寿子 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (30451826)
伊藤 武男 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (40377982)
佐々木 圭一 金沢学院大学, 美術文化学部, 准教授 (50340021)
鷺谷 威 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (50362299)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地殻変動・海底変動 / テクトニクス / 超巨大地震 / 海岸段丘 |
研究実績の概要 |
琉球海溝におけるプレート間カップリングの様子を明らかにするために,多種多様な観測や調査を行ってきている. 海溝軸に直交する測線上での地殻変動を調べることを目的に,H25年度に設置した横当島(無人島)のGNSS観測点を補修・維持すると共に,現地装置に保存されていた一年分のデータ回収をおこなった.加えて,その解析も進めた. 海岸段丘の地質学的調査に於いて,新たにⅠ面の露頭を複数箇所で確認することができた. これまでに本研究で得られている直近の測地学的データ(水準測量,GNSS)と,より長期にわたる変動である海岸段丘の隆起データなどに関して,2次元有限要素法を用いた数値シミュレーションによる再現を試みた。これらの解析により、喜界島の長期的な隆起はプレート境界の形状に依存しており,奄美海台の沈み込みなどに起因する500m程度のプレート形状の起伏を仮定することで,再現できることを示した。また、これらの長期的な隆起は,既存の海外段丘によって得られた過去の地震を数値シミュレーションに取り込み,喜界島の上下変動の時間発展を計算した結果、地下構造の粘弾性構造の影響が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 これらの結果を受けて、より精密な微地形が検証には有効であると判断し,現地で微地形をドローンにより撮影し,数センチ程度の空間解像度を持つ地形の数値データを作成した。海岸の地形は複雑であるので,肉眼ではこうした地形データから微小隆起などを識別する事は難しいが,地形データのスタッキンなどの数値処理により,検出出来る可能性がある.それらを解析することで、今後のより小さいM7から巨大なM8程度の過去の地震履歴について情報を得ることができると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,様々な観測や調査を行い,プレート間カップリングの性質を明らかにしようとしているものである. これまで喜界島における水準測量を始めとする直近の地殻変動のデーター収集は計画通りに通りに進行している.また横当島でのGNSS観測も順調に継続されており,奄美大島および喜界島でのGNSS観測点のデータと合わせることで,より広域での地殻変動の様子を明らかにしつつある.また本計画期間は最長で5年という測地学的には短期間ではあるが,対象地域の経年的な変動をより正確に知るための観測として,役立つな観測となっている. これまで得られたデータに基づきながら,有限要素法をもちいたコンピュータシミュレーションにより,プレート間カップリングの様子を明らかにする解析にも着手し,プレート境界形状および地下の粘弾性構造とどのような関係があるかについて知見があられつつある. 大きな変位をもつ海岸段丘の形成過程の研究と並行して,その中に格差得た微小変位の海岸段丘の検出を目指した,ドローンを利用して海岸地形を高分解能で数値化する試みを開始し,解析に使えるデータを得ることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画に従って各種の調査・観測を継続して行い,それらの結果を総合して最終年度までに喜界島周辺におけるテクトニクスをあきらかにして,琉球海溝沿いにおける将来の(超)巨大地震発生の可能性に関する議論を行えるようにする. 地質学的調査および地形学的調査としては,完新世に形成された大きな隆起量を持つ海岸段丘の形成過程の研究を引き続き行い,より多くのデータを得ることを目指す.またドローンを利用した微地形データの収集をH27年度実施地域とは別の地域で行うとともに,微地形データの解析法の工夫を含めて,得られた微地形の数値データの解析を進め,より微細な海岸段丘の検出を試みる. 測地学的には喜界島近傍で大きな地震などが発生しない限り,水準測量を繰り返す必要はないと判断するが,横当島でのGNSS観測を継続しておこない,出来るだけ長期にわたる現在の変動を明らかにする. 本研究で得られた種々のデータに基づきながら,有限要素法などを用いて対象地域のプレート間カップリングの様子や,それをもたらす要因が何であるかを調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
喜界島および横当島での調査について,当初予定していたものより,日程調整や天候等の影響で短縮されたことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に出来なかった地域での微地形調査を追加で行う予定である.また大きな地形として残されている海岸段丘の高度分布を全島的に調査する予定である. また地質学的な調査に十分な時間と手間をかけ,サンプリングおよびそこに含まれる化石の年代決定数を出来るだけ多くするなどして,海岸段丘の形成年代の推定値の精度や,全島的な高度分布の精度を上げる予定である.
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