研究実績の概要 |
当年度は最終年度であるので、設置した横当島のGNSS観測点の撤収するとともに、取得した観測データとGEONETの観測データを統合して解析を実施し、これまでの観測データを説明するモデルを2次元有限要素法による再現を試みた。このモデル化により、測地的な測量による変動と、地質学的に得られている長期的な隆起速度の両方を説明するためには、地震間の粘弾性応答が重要な役割を果たしていることがわかった。これらの結果を受けて、精密な微地形の調査により、粘弾性応答に起因する情報が地形に残されているのかについての検討を行った。その結果、明瞭な痕跡は認められなかったが、幾らかの遷移的な段丘が認められた。一方、地質的な検討として、約5万年前の化石サンゴ礁に注目して、段丘地形が必ずしも明瞭でないため、現地調査で島南西部および北東部における分布調査を行った。その結果、予察的な結果と大きな違いはなく、分布高度が南西部で標高50m、北東部で標高20mと、古水深を考慮しても過去5万年間で、約20mの差を生じる傾動運動が起きたと見積もった。また、不連続に分布する完新世最高位段丘について離水年代が約7,000年前と見積もられていた中で、島南部の1地点のみで6,300年前の離水イベントが報告されている(Sugihara et al. 2003)。これ対して、先に行ったボーリング掘削調査により礁嶺および礁池相から構成されることが明らかになった島西部のサンゴ礁段丘について、昨年度に引き続き年代測定を実施した。礁嶺相に比べて新しい年代が期待された礁池相だが、礁嶺相(約7,000年前)と年代差が見られなかった。また、島北端で発見した最高位段丘に対比される海浜礫層中のサンゴ礫の年代が約6,000年前と見積もられた。全体像はまだ不明であるが、6,300年前の離水イベントに関係する堆積物の可能性が示された。
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