研究課題/領域番号 |
25287113
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山岡 耕春 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183118)
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研究分担者 |
伊藤 武男 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (40377982)
田所 敬一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70324390)
古本 宗充 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80109264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プレート境界 / フィリピン海プレート / 変換波 / レオロジー |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)反射波・変換波・地震波干渉法を実施することで沈み込むプレートの形状とその境界面のインピーダンスを高解像度で推定することで、プレート境界面の物理特性を把握する.(2)深部低周波微動とスロー地震の特徴を整理しプレート境界面の力学特性を把握する。(3)モデル化によるマントルウェッジおよび屈曲したプレートの力学的影響を行うことを目標としている。 (1)については、西南日本下に沈み込むフィリピン海プレートの複雑な形状を把握するため,紀伊半島と中部地方南部において発生した54個の地震を用いて,低速度の海洋性地殻に捕捉されたトラップ波を解析した.この結果,沈み込む海洋性地殻と陸側の地殻が琵琶湖周辺で面的に接触しており,かつ琵琶湖下では南に向かうほどフィリピン海プレートの西方向への沈み込み角度が高角になることが明らかになった.また太平洋プレート内で発生し,コアマントル境界で反射したS波がフィリピン海プレートで変換したScSp波を利用して、プレート境界の性質を推定した。その結果、沈み込み深部において流体の影響によりVp/Vsが大きくなっていることを示唆する結果が得られた。また精密制御震源の発生する地震波を用いて、地殻内のS波の異方性がプレートの動きに伴うことを示唆する結果を得た。(2)については、伊勢湾周辺に連続GNSS観測点を研究開始後計7箇所に設置し運用している。これらの観測網により,低周波深部微動に伴うと考えられる地殻変動が観測されている.(3)については、 日本列島周辺領域において,3次元スラブ形状,深さ依存の粘性率,地形,3次元地震波速度構造に基づく弾性パラメータの不均質を考慮した有限要素メッシュを構築した。形状とレオロジーを全考慮したモデル、粘性率一定モデル、層構造モデルの3種類の有限要素メッシュを作成し、粘弾性応答の解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、(1)反射波・変換波・地震波干渉法を実施することで沈み込むプレートの形状と物理特性を把握する.(2)深部低周波微動とスロー地震の特徴を整理しプレート境界面の力学特性を把握する。(3)レオロジーのモデル化により力学的影響を行うことを目標としている。 (1)については、地殻やマントル内を伝播する地震波を用いてプレートの形状と力学特性に関する研究を進めるという目的を達しつつある。反射波については、精密制御震源の放出する地震波を用いてプレート境界での反射特性を調べた論文が公表されている。現在は、反射波の時間変動から力学特性の推定を試みている。変換波については、当初はHi-net等の定常観測点では必ずしも明瞭な変換波が認められないため、地震計アレイ観測のデータを用いて流体の影響によりVp/Vsが大きくなっていることを示唆する結果が得られた。また、プレート内の海洋性地殻内で発生した地震の波を用い、沈み込むプレートと陸側の地殻が琵琶湖周辺で面的に接触していることが明らかになった。(2)については、伊勢湾周辺に連続GNSS観測点を研究開始後計7箇所に設置し運用しているが、解析にまでは至っていない。これらの観測網により,低周波深部微動に伴うと考えられる地殻変動が観測されている。(1)の解析から、プレートが地殻と接触している場所が明らかにできる可能性を示したが、この接触が地表における地殻変動与えている可能性を地殻変動の解析を進める必要がある。このモデル化には、プレートの接触に加えて地殻のブロックモデルなどを導入する必要があり、時間がかかる。(3)については、 日本列島周辺領域において弾性パラメータの不均質を考慮した有限要素メッシュを構築し、粘弾性応答の解析を行った。本研究項目においては予定通りモデル化がすすんでいると見なすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、(1)反射波・変換波・地震波干渉法を実施することで沈み込むプレートの形状とその境界面のインピーダンスを高解像度で推定することで、プレート境界面の物理特性を把握する.(2)深部低周波微動とスロー地震の特徴を整理しプレート境界面の力学特性を把握する。(3)モデル化によるマントルウェッジおよび屈曲したプレートの力学的影響を行うことを目標としている。 (1)については、精密制御震源が発する地震波を用いてプレートからの反射波の時間変化を捉えるために障害となる地下水変化のモデル化を進める。精密制御震源を用いた地殻内S波異方性変動の検出を進めることでプレートによる力学的影響を評価する。プレート内海洋地殻で発生する地震の波を用いたプレート形状の研究については、解析対象とする地震数を増やし、地殻とプレートとの接触領域に関する精度向上を図る。(2)については、取得したGNSSデータの解析を進め、中部地方における地殻の変動の検出を進める。(3)については、前年度に構築した有限要素モデルの高度化を図るとともに、観測されたGNSSデータの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年の御嶽山噴火を受け、2015年度も研究分担者を含め全体のロードが増加した。御嶽山の緊急の観測網整備とデータ解析および火山防災協議会等を通じた、県や地元への貢献など、多岐にわたる。このようなロードの増加により、研究費執行におくれが生じたため、予算を翌年度執行とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、研究計画の最終年度である。本年度の大きな研究項目は、全体をまとめたモデル化の実施である。そのため、当初に比較的強力な計算機を導入するとともに、前年度に引き続き研究員雇用を行う。その他、分担者によりる課題研究の実行により年度内に予算執行をする予定である。
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