研究課題/領域番号 |
25287115
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
篠原 宏志 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 首席研究員 (80357194)
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研究分担者 |
風早 竜之介 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 研究員 (50637379)
下司 信夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 主任研究員 (70356955)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 火山ガス / 火山噴火 |
研究実績の概要 |
活発に噴煙・噴火活動を継続している桜島火山において火山ガス組成観測を実施するために、火山ガス感応起動型連続観測装置を開発し、H25年度に試験観測を開始した。H2SセンサーはSO2にも感度を持っているため、連続観測装置ではH2SセンサーのSO2に対する感度をあらかじめ測定し補正して、真のH2S濃度を算出している。しかし、桜島においては測定される濃度が低いため、補正誤差が大きく正確なSO2/H2S比の算出が困難であった。そのため、H26年度にH2SセンサーにSO2を除去するためのフィルタを設置することにより、SO2/H2S比の精度を向上させた。桜島では連続観測装置は火口から離れた山麓に設置してあるため、H2O/SO2などの測定は困難である。また、自動測定のため噴火発生等活動状況に合わせた観測もできない。そのため、Multi-GASを搭載したセスナ機で噴煙を横断することにより噴煙組成の観測を行い、H2Oを含む主要成分組成の定量化に成功した。また、火山灰を含まない定常噴煙活動中と少量の火山灰を含む連続噴煙活動中にそれぞれセスナ機観測を実施した結果、主成分組成は顕著な差はないが、計算される見かけの平衡温度が連続噴煙活動中の方がやや高いことが推定された。 浅間山において、2004-2014年の間の火山ガス組成観測結果の再評価を行い、噴火の発生や火山ガス放出量の大きな変動等の火山活動の変化にも関わらず、火山ガス組成には変化がなかった事を明らかにした。これに基づき浅間山でのマグマ・火山ガス供給過程のモデル化を行った。阿蘇山では2014年11月末から噴火が発生し、現在でも連続灰噴火とストロンボリ式噴火が繰り返されている。この噴火に伴い放出される火山ガス組成の観測を行い、現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
桜島火山において火山ガス感応起動型連続観測装置による連続観測、セスナ機および無人ヘリによる噴煙観測を実施し、定常的噴煙活動の火山ガス組成を明らかにするとともに、連続噴煙活動時の火山ガス組成とも大きな違いがないことを明らかにした。しかし、セスナ観測時等には爆発的噴火に遭遇していないため、爆発的噴火噴煙の組成の観測は実施できていない。浅間山においては、連続観測、現地繰り返し観測の結果を取りまとめ、噴火発生時にも火山ガス組成の組成に顕著な変化がなかった事を明らかにし、その火山ガス供給過程のモデル化を行った。しかし、火山ガス組成一定の条件下で噴火を発生可能な過程に関する解釈はまだ出来ていない。阿蘇では2014年から連続灰噴火・ストロンボリ式噴火が発生し、現在も継続しており、これらの噴火により放出された火山ガス組成の観測が実施できたが、その結果は現在解析中である。この結果は、噴火により放出された火山ガスの組成に関する貴重なデータであるため、今後、噴火発生過程の解析に期待が出来る。 以上、観測手法の開発実用は十分に進み、定常噴煙活動に関するデータは蓄積されモデル化は進んでいるが、噴火噴煙の測定事例が少なく、特に爆発的噴火の観測事例が欠けているため、その点に関するモデル化はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
噴火に対応する火山ガス組成および放出量データの蓄積が課題である。そのため、現在噴火が継続している阿蘇山における噴火に放出される火山ガス組成の観測頻度を増やし、データを蓄積するとともに、同時に放出された火山灰の特徴や噴火活動の特徴の把握を行い、噴火過程における火山ガスの役割を明らかにする事を目指す。特に、連続灰噴火やストロンボリ式噴火に加え、熱水系との相互作用の結果と考えられるマグマ水蒸気爆発も発生している可能性があるため、火山灰の構成物解析や水溶性付着生成分の分析結果と火山ガス組成、噴火推移の対比を実施することにより、噴火推移の規制要因を明らかにする事を目指す。また、阿蘇山の噴火噴煙中では火山ガス組成が短期変動している可能性が明らかになっているため、火山噴煙観測時の火口周辺のビデオ映像等を同時に取得する事により、組成変動要因の解釈を進める。 桜島においては、セスナ機観測の際には京都大学等に協力を依頼し、山体の傾斜変動データを確認することにより噴火発生のタイミングを評価した上で観測開始のタイミングを計ることにより、爆発的噴火噴煙の観測実現の可能性を高める。浅間山においては、噴火と同様のメカニズムで発生していると考えられるVLP地震の発生を伴う火山ガス突出により放出される火山ガスの組成の定量化を試みることにより、今までは検知できなかった微小な組成変動の定量化を目指し、それにより噴火発生に伴う火山ガス組成の特徴の把握を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
口永良部島、御嶽山、阿蘇山の噴火発生により年度後半に、火山監視観測業務が増大し、年度後半に集中的に計画していた飛行観測等が一部実施できなかったため。また、海外研究集会における成果発表を予定していたが、一身上の都合により参加できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
年度初頭から計画的に現地観測、飛行観測を実施する。昨年度発表予定であった課題も含め海外における研究集会での成果発表を複数実施する。
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