研究課題
基盤研究(B)
波線理論に基づくトモグラフィーと、有限波長理論に基づくトモグラフィーを融合させたハイブリッドトモグラフィー法を開発し、プログラムコードを完成させた。極東ロシアにおける広帯域地震計、西太平洋における広帯域海底地震計の臨時観測点を使い周期10秒付近の帯域で測定した観測点間の走時差に有限波長理論を適応し、波線理論を適応する走時データと合わせてトモグラフィーを実行した。結果長周期データに対する有限波長理論の有効性が示された。日本海溝・伊豆小笠原海溝から沈み込んだスラブが滞留する中国東部を対象領域とするトモグラフィーを行い、この領域下のマントル遷移層に横たわるスラブの形状に関し新たな知見を得た。トモグラフィーに先立ち、対象領域における臨時機動観測網 NECESSArray のデータ及び中国定常観測点データ含む可能な限りのデータを収集を行った。収集したデータを周期約2秒から30秒までを10の帯域に分け2観測点間の相対走時を波形相関法で測定し分散データを得た。得られた分散データは、既存のモデルでは説明できないもので、さらに微細な構造を示唆するものであり、ハイブリッドトモグラフィーにより中国東北部において浅部からマントル遷移層にいたるまで解像度の向上に成功した。得られた3次元P波速度構造は松遼盆地の周辺の新生代火山の下約200kmまで低速度異常を示している。日本海溝から沈み込んだスラブは松遼盆地の東の造山帯で660km不連続面とぶつかるが、そのさらに西方ではスラブは見られない。これはその南北で遷移層に横たわるスラブが見られるのと対照的であり、あたかも横たわるスラブに空隙が松遼盆地の下であるかのように見える。中国東北部における火山は沈み込み帯における島弧火山とは違う特異な火山でその成因が議論されているが、横たわるスラブの空隙が関連しているという新しい仮説を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
波線理論に基づくトモグラフィーと、有限波長理論に基づくトモグラフィーを融合させたハイブリッドトモグラフィー法を開発を完了させた。ハイブリッドトモグラフィー法を実データに適応し、有用性を示した。中国東北部を対象としてトモグラフィーを実行し日本海溝・伊豆小笠原海溝から沈み込んだスラブの詳細な形状とその上の上部マントルの構造を明らかにした。これらは全て計画通りである。
対象をフレンチポリネシアとしたトモグラフィーを実行し、太平洋マントルプリユームの実態を明らかにする。広帯域海底地震計を解析するが、海底では海洋及び堆積層での多重反射波が直達P波の後に観測されて、この多重反射波の干渉により周期帯によってP波到達時刻が異なって見える見かけ上の分散が生じることが予測される。粗帆法制法の開発も進める。平成25年度に得られた中国東北部の結果を論文としてまとめる。
物品購入が当初予定より少額となった。海外共同研究者と日程調整困難なため打合せができず、また予定していた学会に参加できなかった。トモグラフィー画像解析装置を購入予定である。海外共同研究者と打合せに向けて日程調整している。
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Treatise on Geophysics, second edition
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GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS
巻: 40 ページ: 5652-5657
DOI: 10.1002/2013GL057401
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 118 ページ: 5920-5938
DOI: 10.1002/2013JB010466