研究課題
日本海溝から沈み込んだスラブはマントル遷移層の深さ約500 ~ 600 kmで滞留していること(スタグナントスラブという)が知られているが、中国東北地方の松遼盆地でそのスタグナントスラブに孔があることが分かった。この孔を通しての上昇流が中国と北朝鮮の国境にある火山・白頭山(長白山)と関連しているであろうと提案した。さらに日本海溝・伊豆小笠原開講から沈み込んだスラブに関して詳細な解析をしたところ、得られたP波速度異常の振幅の違いで非常に異なるスラブ形状を示すことが分かった。1.0%以上の高速度異常域の西端は現在の海溝とほぼ平行であるのに対し0.5%以上の高速度異常域の西端は線状で現在の千島海溝と琉球トラフを結ぶ線と平行である。過去のプレート再現図と比較すると1.0%以上の高速度異常域は15~25万年前から沈み込んだスラブ、0.5%以上の高速度異常域はそれ以前の沈み込みを表していると考えられ、速度異常の振幅の違いは熱伝導により沈み込んだスラブの低温異常が年代とともに小さくなっている現れだと考えられる。このほか、2観測点間のP波相対走時を測定する際、海洋を含む地殻多重反射波の干渉に寄って見かけの分散が生じるが、この見かけの分散を補正する測定方法を確立した。この方法をフレンチポリネシアに展開した広帯域海底地震計と海洋島の広帯域地震計に適応しすべての観測点ペアの相対走時を周期2秒から30秒間の10帯域で測定した。このデータを使用したトモグラフィーを実行し従来のトモグラフィーより上部マントルの解像度を向上させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究で開発した破線理論に基づくトモグラフィーと有限波長理論に基づくトモグラフィー融合したハイブリッドトモグラフィーを確立し、中国と東北地方に展開した広帯域地震計網、フレンチポリネシアに展開した広帯域海底地震計に応用し、従来のトモグラフィーに比べ高解像度イメージを得ることに成功した。広帯域海底地震計データを使用するにあたり、海洋を含む地殻多重反射波の干渉による見かけの分散を補正する測定方法を確立した。
フレンチポリネシアのトモグラフィーで得られた結果の評価を行い、マントル対流の数値実験、アナログ実験等の結果と比較しながらフレンチポリネシア下のマントル上昇流について考察する。対象域を日本の太平洋沖シャツキーライズ付近とし、そこに展開された広帯域海底地震計の解析、トモグラフィーを行う。
今年度予定していた海外研究協力者との打ち合わせが次年度4月に延期されたため、旅費に未使用額が生じた。
延期された海外研究協力者との研究打合せのための旅費に使用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
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