研究課題/領域番号 |
25287117
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 弘信 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80358754)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 巻雲 / 衛星観測 / リモートセンシング |
研究概要 |
本年度は,まず研究に必要なデータ記憶装置や計算サーバー等の環境環境を整備し,データ解析用の計算コードの整備やデータの収集,MODISの3つの赤外窓領域バンドを用いた解析アルゴリズムの改良を行った。MODISプロダクトの誤差を再検討し,使用するデータ品質の改善を測った。海面温度についてはMODISの昼と夜の8日平均値を別々に用いることにした。大気の気温と水蒸気のプロファイルについては,MODISプロダクトに替えてMERRA再解析データを用いることとした。また,氷雲のデータ品質が大幅に改善されたと言われているMODISコレクション6のデータが公開されたため,このデータを2007年1年間について収集した。現在この解析を進めている。誤差解析を行い,解析アルゴリズムの精度と効率の改良を図った。結果的に現在の手法は光学的厚さが0.5~5程度のときに推定精度が最もよく,太陽反射光を用いているMODISの標準プロダクトと比べると,光学的に薄い雲の画素をより多く解析できていた。他の特長として,推定値の不確定性を診断することができ,観測の自由度や情報量などの品質に関する診断が可能となることが挙げられる。研究期間を通して,衛星に同期して地上からの観測を継続しており,巻雲の光学・微物理特性との関係を今後明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従っておおむね順調に進展している。データ品質の改良,データの収集や解析アルゴリズムの改良は計画通り進んだ。誤差解析や事例解析により,本研究の手法の特性が明らかとなった。検証のため,九州大学の能動型センサーを用いて求められた微物理特性との比較や東北大学にて運用中のライダーによる雲頂高度との比較を行い,整合的な結果を得た。解析アルゴリズムや誤差解析と初期検証の結果は,国内外の学会で発表したほか,米国気象学会の学術誌に投稿し,2014年1月に受理された。今後使用するチャンネルを増やすために,赤外波長帯の観測値を高速かつ高精度に再現するフォワードモデルの開発が必要であり,平成25年度にはその理論的枠組みと設計の一部ができた。今後詳細設計と計算コード作成をし,平成26年度前期内の実現を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はMODISのデータ解析システムの改良を行い,2007年1年間のデータ解析を行う。これにより巻雲特性の地理的分布と季節変動を明らかにする計画である。また,能動型衛星観測データを用いた雲頂高度や雲の厚さと,MODISから求めた光学的厚さを比較してその間の関係や,CALIPSO衛星搭載のライダーによる偏光解消度とMODISから求めた微物理特性の関係を調べる。また,平成26年度の前期には,赤外波長帯の観測値を高速かつ高精度に再現するフォワードモデルの開発を行う。現存のモデルを拡張して,多層の不均質大気について散乱を含む放射伝達を解くモデルとし,水蒸気の吸収帯と二酸化炭素の吸収帯にも使えるようにする。モデルの感度解析を行い,上層と下層の雲の物理・光学特性や温度や厚さ,背景大気の成層構造や地表面状態等の各種の要因に起因する感度とモデル化誤差を詳細に評価する。より正確な放射伝達モデルの計算と比較して近似モデルの誤差を定量化する。これを基に最適推定によるインバースモデルに組み込む。フォワードモデルの改良と誤差評価,インバースモデルの設計を繰り返して,最適なアルゴリズムを構築する。また,温暖前線の通過に伴う巻雲から中層雲への遷移などの典型的な事例について,集中観測期間を設定して東北大学にて運用中の地上観測測器(ライダーやスカイラジオメータ,各種放射計)と静止気象衛星のデータ等によって巻雲の特性の変化を明らかにする計画である。 その後には,2002~2014年の長期間のAqua衛星搭載MODISデータを収集し,データ解析を行う。その結果から巻雲特性の年々変動を把握する。熱帯域の対流活動やエルニーニョ現象と上層雲の変動の関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1月に論文が受理され,その出版費用を支払うため未使用分として残していた。実際には請求が来るまで時間がかかったため,未使用分のまま残った。 予定してた論文の出版費用として使用する予定である。請求はすでに来ており,現在平成26年度に支払い手続きを進めている。
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