研究課題/領域番号 |
25287118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 英太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60360749)
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研究分担者 |
須賀 利雄 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70211977)
植原 量行 東海大学, 海洋学部, 教授 (90371939)
辻野 博之 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 主任研究官 (50343893)
鋤柄 千穂 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 機関研究員 (90447128)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋物理 / モード水 |
研究実績の概要 |
手法1(高解像度船舶観測による研究):2014年2-3月に実施した、STMW形成域における定点観測結果から、深いmixing layerの発達には風よりも浮力フラックスの効果が大きいことを明らかにした。2011年3月に福島第一原発より放出された放射性セシウムの分布の時系列解析により、STMWの移流速度が地衡流による移流速度よりもはるかに速いことを見出した。気象庁の137E定線の解析により、過去20年間北太平洋亜熱帯循環の北西部で主密度躍層上部以浅が顕著に低塩化し、その変化に対して黒潮続流域のサブダクションが大きな役割を担っていることを見出した。 手法2(高解像度モデルによる研究):北太平洋海盆全域に領域を拡張した数値モデルを、衛星観測等に基づいて較正した気象庁大気再解析データにより約60年間駆動して、北西太平洋域の海洋長期変動の再現実験を行った。観測との比較に基づき、中規模渦や黒潮続流などの再現性を向上させるためのパラメータ調整を行った。パッシブトレーサー法、粒子追跡法を用い、数値モデルにおけるモード水の分布過程の詳細を調査するための予備実験を実施した。 手法3(データ解析による研究):過去10年強の衛星海面高度・アルゴデータと気象庁の定線観測データの解析により、北太平洋のモード水のサブダクション率に10年規模の変動があることを示し(Toyama et al., 2015)、特にL-CMWに関しては形成域が東西方向にシフトすること(Kawakami et al., in press)、STMWに関しては黒潮続流の10年規模変動に伴いサブダクションが変化し、下流域における生物地球化学的パラメタの変動を生んでいることを明らかにした(Oka et al., 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
船舶観測に関しては、L-CMW形成域西部の詳細な水塊構造をターゲットとした白鳳丸航海がやむをえない事情により1年延期となったが、2016年6月の実施に向けて準備中である。昨年度より始めた放射性セシウム分布の解析により、物理パラメタのみでは得られなかった水塊の移流・拡散過程が明らかとなりつつある。 モデリング研究に関しては、モデル領域を北西太平洋域から北太平洋全域に拡張することにより、北太平洋におけるモード水の形成、分布・消散過程のシームレスな解析を可能にした。パッシブトレーサー法、粒子追跡法、等密度面解析法を、数値モデル計算を実施しながら同時に適用可能となるようにソフトウェアを整備し、より精緻なモード水の形成、分布・消散過程解析への準備を整えた。 データ解析による研究は、アルゴデータの10年間のデータ蓄積により、モード水の形成・サブダクション・移流・拡散の10年変動に関して順調に成果が出つつある。
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今後の研究の推進方策 |
観測面では2016年6月に白鳳丸航海を行い、2013年4月の航海で観測できなかったD-CMW形成域(160-170E)も含め、L-CMW形成域の西側(140-170E)において高解像度の観測を行う。2013年4月の観測結果やアルゴ・衛星データなどの解析結果と併せ、CMWの形成・サブダクションに中規模以下の現象が果たす役割を解明する。また、アルゴデータと気象庁の定線データの解析を発展させ、モード水の諸過程が生物地球化学的変動に与える影響の研究を進める。さらに、放射性セシウムとモード水の分布の関係についての解析を進め、物理データのみからは得られないモード水のサブダクション・移流・拡散過程を明らかにする。 モデリングについては、気象庁長期大気再解析データに基づいて作成した海洋モデル駆動用データセットにより、直近までの海洋長期変動再現シミュレーションを行い、本年実施される船舶詳細観測による結果との比較検討を行う。特に、海洋モデルで計算された、海面境界条件、および海洋内部変動に起因する直近10年間における中央モード水形成過程の変遷を踏まえた上での本年の中央モード水の形成状況に対する解釈が、船舶観測結果の理解に適用可能か否かに着目し、モデル・観測双方の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入したストレージ装置(仕様「データダイレクト・ネットワークス・ジャパン社製筐体・HDD」)の購入経費が当初の予定より節減されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に同装置にかかる保守費(30,744円)の一部に充てる。
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