研究課題/領域番号 |
25287123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 裕 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40346854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋物理 / ラングミュア循環 / ADCP観測 / ラージエディシミュレーション |
研究実績の概要 |
海洋表層の乱流混合過程に大きな影響を与えるとされるラングミュア循環について、現場観測とそのデータ解析、そして数値実験を行った。 前年度(2014年度)に行った現場観測データの詳細な解析を行った。5ビームADCPで計測した鉛直流速の変動強度(標準偏差値)を詳細に調べたところ、先行研究と同様に摩擦速度と概ね良い対応にあり、乱流の成因が風であることを示唆する結果を得た。しかし、計測で得たラングミュア数(La)で場合分けしたところ、ラングミュア循環が卓越する状況では(Laが小さい場合には)、変動強度はラングミュア乱流の速度スケールとより良い対応を示すことを見出した。また、5ビームADCPとHADCPにより、ラングミュア循環の特徴である筋状構造の検出に成功した。これらの結果から、Laが小さい場合には乱流はラングミュア循環に起因すると結論づけられた。また、先行研究で示唆されていた摩擦速度とストークス速度の比例関係も見られ、変動強度が摩擦速度に比例する理由も確認した。なお以上の結果の統計的有意性を向上させるため、2015年11~12月に白浜沖で2014年度と同様の現場観測も行った。 さらに乱流変動を良く再現する数値実験(ラージエディシミュレーション)を行い、ラングミュア乱流が発達する場合には、吹送流(平均流)の流速が摩擦速度に比例しないことを見出した。この結果と、対馬海峡における著者らの観測結果(吹送流の流速は摩擦速度に比例する;Yoshikawa and Masuda 2009)からは、対馬海峡ではラングミュア乱流は主要な混合要因ではないことを示唆している。 以上の結果から、ラングミュア循環は表層混合に大きな役割を果たしうるものの、それは一部の先行研究が主張しているほどいつでも起こっているわけでは無く、その相対的な役割について今後検討する必要があるという結論を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白浜沖での現場観測により、ラングミュア乱流の詳細な特性を見出すことができたのは、予想以上の成果であった。また数値実験により得られたラングミュア混合と吹送流の関係は、ラングミュア乱流が全球における表層混合に果たす役割を定量評価する必要性を示しており、新しくかつ重要な成果と言える。一方、現場観測で得られた成果の統計的優位性をあげるために行った2015年度の観測結果の解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた観測結果と数値実験結果は、いずれも新しい知見を含んでいる。これらの結果を早急にまとめ、国際学会で発表すると同時に、国際誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現場観測の終了が12月末であったため、その解析とその結果の公表が遅れている。次年度においても引き続き解析を行い、これまでの成果とともにまとめ、学会や学術雑誌を通じて公表するため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでに得た成果をまとめ、学会や学術雑誌での発表を通じて、成果を公表する。
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