• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実績報告書

東シナ海上における気象津波発達過程に関する海洋気象観測

研究課題

研究課題/領域番号 25287124
研究機関広島工業大学

研究代表者

田中 健路  広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30315288)

研究分担者 中條 壮大  熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (20590871)
山田 文彦  熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (60264280) [辞退]
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード大気海洋相互作用 / 気象津波 / 気圧微変動 / ニューラルネットワーク / 東シナ海
研究実績の概要

第2回目の海上気象観測を2014年12月上旬に長崎大学水産学部実習船鶴洋丸の共同運航により実施した.大陸からの強い寒気の流入により海上が非常に荒れていたため,航海の安全上の配慮から,当初予定していた観測海域から長崎県女島周辺海域に変更して行った.12月2日から3日にかけて,大陸側の高気圧の東端部が、上空の寒冷渦(寒冷低気圧)の南縁に沿って南東側に張り出し,切離されて太平洋上に新たな高気圧が現れ,2つの高気圧の間の気圧の谷に前線が形成された.上空3,000m~5,000m付近では中国南岸側からの暖気流入が活発となり,暖気層での活発な上昇流とその直上の乾燥した寒気の沈降による不安定が見られた.前線の形成と共に周期10~60分、全振幅 1.0hPa前後の気圧微変動が連続的に発生し,気圧傾度力によって生じた海洋長波(気象津波)が九州沿岸に到達した.鹿児島県枕崎港で全振幅約80cmの顕著な潮位副振動が観測されたことから,東シナ海上での気象津波発生・伝播に関わる海上での大気側の過程を捉えた貴重な成果を得ることができた.
1979年3月に長崎港で観測された過去の顕著事例について,気象庁の自記記録資料から気圧微変動を時系列データへと変換し,気象庁長期再解析データを用いた東シナ海上の気圧微変動の再現計算を試みた.従来の研究で無視されていた,第2波以降の気圧微変動の重要性を示唆する結果が得られた.
2009年2月の九州西岸で発生した副振動について,特に大潮時の下げ潮・上げ潮と重なった際に大きな副振動が発生した可能性があることを観測値より示した.また,発生要因の特定が難しい副振動について,客観的・帰納的にその予測を行うためのニューラルネットワークを応用した予測モデルの開発に着手した.実測の気圧,潮位やその変化率等の信号を用いて,確率的にではあるが数時間前までの予測が可能であることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第2回目の東シナ海上での海上気象観測を12月1日~4日の日程で実施し,観測期間内において,気象津波発生前の大陸側からの寒気流入の場から暖気流入場へと移行する過程の観測データが取得できた.現象発生前から現象に至るまでの海面付近の大気境界層の構造から、上空の乾燥空気沈降場と暖気上昇の混合場までの詳細な鉛直構造が得られた意義は非常に大きい.海上の波浪などの自然条件や,観測実施海域でのゾンデ観測の時間帯の制限など,観測実施に際し当初の計画から一部変更を余儀なくされたものの,本研究の主軸となるデータが取得できたという点で,今後の気象津波に関する研究の進展に大きな寄与をもたらすことが期待される.
海上観測が定常的に実施困難である現状から,沿岸域の定点観測を用いた解析手法の構築が必要となる.気圧微変動のシグナルを早期に検出し予報を行う上でのニューラルネットワークモデルを応用したモデル構築により,試験的段階ではあるが気圧微変動の予測可能性の検討が行えるようになったという点でも一定の進展が得られた.

今後の研究の推進方策

本研究でこれまで取得された観測データおよび、潮位観測データや再解析データなどを用いて前線形成時の気象場の特徴を、総観スケールから局所スケールまで段階的に捉えていく.それと共に,船上気圧観測データと陸上の気圧観測データを組み合わせて,気圧微変動の空間規模を解析し,ニューラルネットワークを応用した気圧微変動の解析モデルを適用させ,その妥当性を評価する.一連の観測データを基に大気・海洋数値予報モデルを用いて、気象津波の発生・伝播過程を数値解析し、気象津波に関する現象解明と予測手法の構築に資する.

次年度使用額が生じた理由

昨年未使用のゾンデ測器本体を優先して観測を行ったことや,自衛隊の航空訓練により観測対象海域での計測機器の打ち上げ時間帯が制限されたことから,年度当初の予定より計測器の使用個数が少なく抑えられたため.

次年度使用額の使用計画

平成26年度までに得られた観測成果を基に,気象庁再解析データや気象庁等のルーチン観測データとを組み合わせ,気象津波の原因となる気象場の更なる解明に向けたデータ解析を進めるために必要な計算機部品の購入や,本研究課題外の大気・海洋相互作用に関する国内外の研究者と研究成果に関する意見交換を行い,今後の国際的規模への研究として展開するための旅費として使用する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 九州東シナ海沿岸で副振動災害を引き起こす気象津波の発生機構に関する研究2014

    • 著者名/発表者名
      浅野敏之, 山城徹, 齋田倫範, 田中健路
    • 雑誌名

      土木学会論文集 B2 (海岸工学)

      巻: 70 ページ: 79-96

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 九州西岸域における副振動の増幅要因に関する一考察2014

    • 著者名/発表者名
      山口 龍太, 古賀 貴之, 高山 隼斗, 田中 健路, 外村 隆臣, 中條 壮大, 山田 文彦
    • 雑誌名

      土木学会論文集B2(海岸工学)

      巻: 70 ページ: I_131-I_135

    • 査読あり
  • [学会発表] 九州西岸の潮位副振動発生時における東シナ海上での大気場に関する観測2015

    • 著者名/発表者名
      田中健路,伊藤大樹,原大祐,橋本賢太郎,打越智大, 大幡由季, 小野雄輝, 高野将大, 福井惇司, 堀田直樹, 三宅正展, 宮庄愛香, 吉岡隼也,森井康宏
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度春季大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2015-05-23 – 2015-05-23
  • [学会発表] 東シナ海沿岸における顕著な潮位副振動発生前の海上気象場に関する現地観測2015

    • 著者名/発表者名
      田中健路, 橋本賢太郎, 原大祐, 打越智大, 大幡由季, 小野雄輝 高野将大, 福井惇司, 堀田直樹, 三宅正展, 宮庄愛香, 吉岡隼也
    • 学会等名
      日本気象学会関西支部2015年度第3回例会
    • 発表場所
      広島地方気象台(広島県広島市)
    • 年月日
      2015-01-16 – 2015-01-16
  • [学会発表] The structure of pressure anomalies generating 1979 meteotsunami in Nagasaki Japan2015

    • 著者名/発表者名
      Kenji Tanaka, Daiki Ito
    • 学会等名
      95th AMS Meeting, American Meteorological Society
    • 発表場所
      フェニックスコンベンションセンター(アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2015-01-04 – 2015-01-08
  • [学会発表] The role of the South China Sea in gererating acoustic gravity waves resulted in meteotsunamis over the East China Sea2015

    • 著者名/発表者名
      Daiki Ito, Kenji Tanaka
    • 学会等名
      95th AMS Meeting, American Meteorological Society
    • 発表場所
      フェニックスコンベンションセンター(アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2015-01-04 – 2015-01-08
  • [学会発表] 1979年3月31日の長崎港でのあびきに関する気圧ジャンプの再現計算2014

    • 著者名/発表者名
      田中健路,伊藤大樹
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度秋季大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2014-10-23 – 2014-10-23

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi