研究課題/領域番号 |
25287125
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
加藤 輝之 気象庁気象研究所, 予報研究部, 室長 (70354438)
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研究分担者 |
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
津口 裕茂 気象庁気象研究所, 予報研究部, 研究官 (90553165)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気象学 / 豪雨 / 水蒸気 |
研究実績の概要 |
高頻度衛星観測データを用いた研究では、発達した降水セルの多くに、ある雲頂高度まで比較的ゆっくりと雲域が発達し、その後雲域が急発達する傾向があることが見いだされ、積乱雲の発達には下層だけでなく上空500~700hPaの湿度も重要であることがわかった。 高層観測・地上観測データを用いた研究では、昨年度に引き続き6月25日から2週間連続して名瀬と南大東島で強化高層観測を実施し、昨年度の観測データも含めて下層水蒸気の変動について解析した。また沖縄本島と西表島における地上気象観測を継続して連続的なデータを取得し、夏季の島の上で発達する対流雲と地形との関係についてデータ解析と数値シミュレーションを行うとともに、寒冷前線の暖気側で発達する線状降水帯の構造を解析した。気象庁や東京大学の観測船、商用フェリーでGNSS観測を実施し、リアルタイム解析においても平均二乗誤差2mmの精度で可降水量解析が可能であることがわかった。 客観解析データを用いた研究では、下層水蒸気に着目した線状降水帯の発生しやすい条件について、地形の影響を強く受ける事例などを考慮して再考察を行った。 数値シミュレーションを用いた研究として、平成27年9月関東・東北豪雨を対象に、下層の水蒸気の流入プロセスに着目した解析を行った。下層の水蒸気は台風第17号の近くを起源としており、関東地方に接近するにつれて水蒸気量が増加していたことが明らかになった。また非静力雲解像全球モデル内の梅雨前線活動の気候学的特性を客観解析データと比較し、その時空間的発達の再現性を議論した。黒潮/黒潮続流域のSST偏差よりもむしろ大陸の温度偏差ならびに大陸からの寒気の吹き出しの流軸位置が重要であることが判明した。 この研究を今度発展させるための研究集会を昨年12月に西表島の琉球大学の研究施設で実施し、研究成果を関係者に共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた高層観測・地上気象観測を用いた研究、客観解析データ・数値シミュレーションを用いた研究ともほぼ計画通り行うことができ、海上での下層水蒸気の蓄積過程として、下層風、下層メソ渦・メソトラフ、暖流(黒潮)、地形(豊後水道)の影響についての知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
東アジア域のメソ気象に関する国際会議に参加し、研究成果を発表するとともに、3年間行った研究成果についての取りまとめを行う。研究成果の論文化に努める。またこの研究を今後発展させ、豪雨の実態解明に繋げるための、効率的な新たな観測システムの構築に関する提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的をより精緻に達成するために、平成28年度に行われる国外と国内の学会に参加し、全体の取りまとめをおこなうため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年4月のメソ対流系に関する国際会議(ICMCS-XI)と5月の日本地球惑星連合大会に参加するための旅費と参加費
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備考 |
報道発表:平成27年9月関東・東北豪雨の発生要因(http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H27/270918/press20150918.pdf)
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