研究課題/領域番号 |
25287127
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
能勢 正仁 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90333559)
|
研究分担者 |
宮下 幸長 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 特任助教 (20435811)
尾花 由紀 大阪電気通信大学, 工学部, 講師 (50398096)
中野 慎也 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (40378576)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | リングカレント / イオン組成 / 磁気嵐 / サブストーム / 酸素イオントーラス |
研究概要 |
平成25年度は、主に、研究課題1(磁場双極子化イベントについての編隊型人工衛星のデータ解析)と研究課題2(微小電磁場擾乱とイオン加速の計算機シミュレーション)に取り組んだ。研究課題1については、まずETS-VIII衛星・AMPTE/CCE衛星のデータを解析し、深内部磁気圏における磁場双極子化に伴う微小磁場擾乱は、ドリフト励起電磁イオンサイクロトロン波動によるものであることを示した。そして、微小電磁場擾乱が、その場でのO+イオンの選択的加速に重要な役割を果たす可能性があることを議論した。同様の解析をVan Allen Probes衛星データを用いて行い、これを裏付けるような初期結果を得ている。研究課題2については、簡単な磁場モデル中でのドリフト励起電磁イオンサイクロトロン波動の線形分散関係式を用いて、この波動を計算機の中で再現し、それによるイオン加速の効率を調べた。その結果、H+よりもO+のほうが強く加速され、粒子スペクトルの形も大きくゆがめられることを明らかにした。この特性は、研究課題1で得られた観測によるものとよく一致していた。以上の結果は、投稿論文としてまとめ、J. Geophys. Res.誌に投稿中である。 また、研究課題3(酸素イオントーラスについての編隊型人工衛星のデータ解析)についても、解析を行い始めた。Van Allen Probes衛星データからULF波動イベントを選び出し、その周波数と磁気圏磁場モデルにおける波動方程式の数値解より、プラズマの平均質量密度を算出した。また、プラズマ波動のデータから高域混成周波数を選び出し、電子密度を算出した。この両者のデータから、プラズマ平均質量を推定した。その結果、朝側のプラズマ圏界面に近いL=3-4において、重イオン密度の高い領域が存在する例が見つかった。この領域がどのように生じるかについての解析に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、Cluster衛星、Van Allen Probes衛星を用いる予定であったが、平成25年度では、主にETS-VIII衛星とAMPTE/CCE衛星を用いた。しかし、解析手法や解析内容は計画通りであり、磁場双極子化に伴う微小電磁場擾乱の性質を統計的に調べた結果、その典型的周波数はO+イオンのジャイロ周波数と非常に近いことが明らかになった。波数ベクトルの推定はデータから直接得ることはできなかったが、波動の振幅が卓越する方向や過去の論文との比較から推定を行い、最終的に微小電磁場擾乱のモードを同定することができた。この結果を元に、簡単な計算機シミュレーションを行い、再現された電磁場擾乱の中でのイオンの加速の様子を調べることができた。研究結果は論文にまとめて学術雑誌に投稿し、現在、査読と原稿修正の最終段階である。また、Van Allen Probes衛星データは初期解析ながら、実施計画に沿って開始したところである。 Van Allen Probes衛星のデータを扱っているうちに、ULF波動が多数見つかったので、平成26年度に実施予定であった研究課題3にも既に着手している。その結果、酸素イオントーラスを見つけることができた。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題1については、Van Allen Probes衛星のデータを解析し、平成25年度に解明されたことの確認を行う。また、Van Allen Probes衛星が2機からなる編隊型人工衛星である利点を活かして、擾乱の伝搬や空間構造の推定などを行う予定である。研究課題2に関しては、ハイブリッドコードによる計算機シミュレーションなどを行い、電磁場擾乱の再現とそれによるイオン加速について、もう少し詳細に調査することを考えている。これらの結果を現在投稿中の論文の続報と位置付けて、早急に投稿論文としてまとめる。 平成26年の夏ごろには、すべての地方時をカバーしたVan Allen Probes衛星のデータセットを利用することができるようになるので、研究課題3については、引き続き同様のイベントを探し出し、酸素イオントーラスの統計的な描像(発生するL値、プラズマ圏界面との相対位置、磁気嵐のフェーズ依存性など)を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在投稿中の論文が平成25年度内に受理された場合を考慮し、出版費用として一定額を未使用としておいた。しかし、査読者からのコメント返送に時間がかかるなどしたため、論文受理と出版手続きが平成26年度になる見込みとなった。主にこうした理由から次年度使用額が発生することとなった。 現在査読中の論文が受理され次第、次年度使用額から出版費用を賄う。次年度に新たに請求する研究費は、平成26年度の研究を進める上で必要な物品購入費や旅費などに充当する予定である。
|