研究課題
基盤研究(B)
下層大気の擾乱に起因する重力音波あるいは内部重力波が電離圏まで伝搬し、ダイナモ作用を介して電離層・磁気圏に電流が流れ、電磁場が変動する現象が、台風や地震・火山噴火時だけではなく、恒常的かつグローバルに存在することが明らかになってきた。その特性と生成メカニズムを定量的に解明するため、地上多点での精密な磁場と微気圧変動、電離層HFドップラー観測と、低高度磁場精密観測衛星CHAMPおよび2013年11月に打ち上げられたSWARM衛星観測データを用い、その電流構造と出現形態を3次元的かつ全球的に解析する。また、数値シミュレーションおよび気象再解析データと比較することにより、下層大気擾乱との関係を明らかにし、宇宙空間での精密磁場観測から、従来の方法では全球的観測が難しい内部重力波や重力音波等の地理的・季節的分布特性を求めると共に、それがこれら短周期大気波動の日々の分布も推定可能とする新たな手段となりうることを示すことが、当研究の主な目的である。H25年度は、2013年11月に打ち上げられたSWARM衛星観測データを収納し解析するための計算機システムを導入するとともに、人工磁場ノイズが極めて少ないトカラ列島中之島で地磁気と微気圧観測装置を設置し観測を開始した。CHAMP衛星による磁場観測データの解析結果を、博士課程学生が中心となって論文としてまとめ、学術誌に投稿した。下層大気との関連を調べる目的で、降雨データなどの気象観測データとCHAMP衛星磁場観測データの比較を修士課程学生が中心になって行ない、修士論文としてまとめた。また、地震発生時の重力音波共鳴の存在と沿磁力線電流発生について、地上磁場および微気圧変動観測を基にまとめ、学術誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
SWARM衛星の打ち上げが当初予定より遅れたが、地上観測装置の設置や、解析用計算機システムの整備等は予定通り実施できた。
H26年度は、SWARM衛星観測データを解析用システムにダウンロードするとともに、解析用ソフトウェアを開発し、解析を実施する。
SWARM衛星の打ち上げが遅れたため、その衛星のサイエンス会議開催等も遅れ、次年度に変更されたため、そのための旅費や解析に必要となる費用を次年度以降に繰り越す必要が生じた。6月にデンマークで開催されるSWARMサイエンス会議出張旅費、および、解析のために必要となる物品費、国内出張旅費として使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Earth Planets Space
巻: 65 ページ: 901-909
doi:10.5047/eps.2013.02.002