研究課題
基盤研究(B)
本年度は,北海道夕張地域,芦別地域,苫前地域の各セクションに露出する蝦夷層群(125Ma~80Maの区間)から凝灰岩試料を合計100試料採集した.これらのうち,80試料について,重鉱物分離を行い,東北大学理学部設置のEDSを用いて,黒雲母,アパタイトの主成分元素分析を行った.その結果,黒雲母については,TiO2の含有量とMgとFeの比(Mg/(Mg+Fe)),アパタイトについてはF, Clの含有量を用いることにより,各凝灰岩の相違を明瞭に識別可能であることが明らかになった.さらに,蝦夷層群の凝灰岩10試料について,ジルコンを抽出し,そのU-Pb年代を測定した.凝灰岩のU-Pb年代測定および蝦夷層群における化石・炭素同位体比層序による地層対比を基に,対比可能と考えられた3層準の凝灰岩(96Ma, 90Ma, 85Ma)について,それぞれ異なるセクション(苫前地域と大夕張地域,浦河地域など,数10~数100km離れた距離)で凝灰岩のアパタイト・黒雲母の鉱物化学組成を比較した.その結果,同じ凝灰岩と思われたものについては,地域が異なっていてもアパタイト,黒雲母の化学組成が全て一致することが明らかになり,この方法によって凝灰岩の広域対比が可能であることが明らかとなった.北海道内だけでなく,本州においても白亜紀の広域凝灰岩が追跡可能かどうかを検討するために,岩手県久慈市周辺に露出する白亜系・久慈層群,山形県鶴岡市近傍に露出する白亜紀流紋岩についても試料の採取を実施した.これらの試料からもアパタイトおよび黒雲母の抽出を完了した.
2: おおむね順調に進展している
凝灰岩のアパタイト,黒雲母の化学組成による各凝灰岩の識別が,当初の予想通り有効であることが明らかになった.これにより,白亜紀テフロクロノロジーの樹立が可能となった.また,ジルコンのU-Pb年代も順調に成果が得られている.以上のことからおおむね順調に進展していると考えられる.
日本の白亜紀の地層に挟まれる各凝灰岩の識別に関しては,今後は分析する凝灰岩の数をさらに増やして,より本研究手法の有効性を向上させることが課題であると考えあられる.また,EPMAなどより分析精度の高い分析機器を用いることにより,より微量の元素の存在量についても検証していくことが重要である.白亜紀の凝灰岩の対比に関しては,さらに調査範囲を広げることにより,より広域な凝灰岩の対比が古い時代の地層においても可能であることを実証する必要がある.
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