研究課題
本年度は,北海道の白亜系蝦夷層群および根室層群,空知層群において凝灰岩試料を50試料採取し,それら試料からアパタイトを抽出してその化学組成を波長分散型のEPMAで分析した.その結果,いずれの凝灰岩のアパタイトもF, Cl, Mg, Mn, Fe含有量において,各凝灰岩で異なる領域にプロットされ,本手法による凝灰岩の識別が十分に可能であることがわかった.一方,本手法の有効性を検証するために,中新世の室生火砕流堆積物および第四紀の十勝よび美瑛火砕流堆積物についても予察的にアパタイトの化学組成を分析した.その結果,十勝火砕流堆積物と美瑛火砕流堆積物に関しては,溶結・非溶結にかかわらず,同一の火砕流のアパタイトの微量元素含有量ははすべて一致し,一方,異なる火砕流(十勝火砕流堆積物と美瑛火砕流堆積物)の場合は違いが明瞭に識別できることが明らかになった.また,室生火砕流堆積物については,数多くのフローユニットから構成されるが,これまでの研究では1つの火砕流として議論されてきた.しかし,今回,室生火砕流堆積物の全層準から試料を採取し,アパタイトを抽出して分析したところ,基底部,下部,中~上部で異なる組成を有することが明らかになった.このうち,広域テフラとして分布していたものは,下部のフローユニットの化学組成と一致することがわかった.このことから,アパタイトの化学組成は,火山噴火のメカニズムを解明するためのツールとしても利用可能であることが判明した.
1: 当初の計画以上に進展している
当初は白亜紀の標準層序とテフロクロノロジーの樹立のみを目指していたが,さらに第三紀や第四紀の火山の発達史にも応用ができることが明らかになり,新しい分野の開拓につながる可能性が見いだせた.
白亜紀の試料採取をさらに追加で採取し,アパタイトの化学組成を分析する.現時点では,白亜紀の各時代の凝灰岩の識別に重点を置いていたが,今後は,同一凝灰岩の追跡に重点を置いていきたいと考えている.また,第四紀の火山噴出物についてもアパタイトの化学組成を検討し,アパタイトの化学組成がマグマの性質をどのように反映するのかについての基礎的なメカニズムの解明も同時に行っていきたい.これを行うことにより,アパタイトの化学組成に検討が,火山噴火のメカニズム解明に貢献するものと考えられる.
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