研究課題
長期的気候変動予測のための陸域古気候解読を目的として,岐阜県・三重県・福岡県およびインドネシア国スマトラ島の洞窟とカルスト地域に発達する石筍と古トゥファ堆積物を研究した。研究項目は年代測定と安定同位体比である。年代測定では台湾国立大学の沈教授の協力を得て数本の石筍試料を対象にして行った。その結果,三重県霧穴で採集した1本の石筍から極めて良好な年代結果が得られた。同位体分析については主に九州大学で行った。岐阜県で採集した石筍については,完新世の酸素同位体記録に明瞭な650年周期を見出した。これは,小氷期や中世温暖期などの歴史記録で認識される温暖/寒冷変動の周期とほぼ一致する。洞窟周辺で採集した雨水の測定結果を対照すると,この石筍の酸素同位体比は冬季/夏季の降水量比率を反映していると思われる。また,58-35kaの期間の記録には千年スケールと変動が記録されていた。この変化は日本海深海堆積物に記録されるものと類似しており,海と陸の気候的リンクを暗示している。霧穴で採集した石筍は過去8万年間にほぼ連続的に成長したものであった。この席順の酸素同位体曲線は中国南部の石筍やグリーンランドの氷床記録と全体的な傾向が似ており,ベーリング・アレレード温暖期に起こった値の急激な低下と,ハインリッヒイベントに対応する同位体比の上昇などの汎世界的イベントを記録する。本地域は冬季の降水量が少ない場所であり,これは日本における東アジア夏季モンスーンの変動を議論する上で重要な記録となると期待できる。また,新潟での研究成果を国際誌に掲載するとともに,岐阜と三重での研究成果は複数の学会において公表した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
助成金未使用額:431円
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Island Arc
巻: 24 ページ: 342-358
doi:10.1016/j.quascirev.2013.06.019
http://www.scs.kyushu-u.ac.jp/earth/kano/paleoc.html