研究課題
調査船「みらい」MR14-02航海に乗船して西部赤道太平洋から昨年度採取した堆積物コア試料について、古地磁気・岩石磁気測定を行い、過去約300万年間の相対古地磁気強度変動を求めた。また、生物源と陸源の磁性鉱物の量比のプロクシであるARM/SIRM比を求めた。その結果、ロングレンジの見かけの相対古地磁気強度変動とARM/SIRM比の間に逆相関関係が認められ、生物源磁性鉱物の割合の変化が相対古地磁気強度推定に混入することが明らかとなった。この混入の影響を評価すべく、独立な古地磁気強度変動データを得る目的で、宇宙線生成核種10Beのフラックスの測定を開始した。また、堆積物の物性変化が堆積残留磁化獲得プロセスに与える影響を調べるため、粒度組成を測定した。海底堆積物最表層における生物源マグネタイトの分布の詳細を調べる目的で、今年度、調査船「新青丸」KS-14-13航海を実施して、日本海の海底表層の酸化・還元境界を含む堆積物をマルチプル・コアラーを用いて採取し、岩石磁気分析等を行った。酸化・還元境界直下で、生物源と陸源の磁性鉱物の量比のプロクシであるARM/SIRM比が最大になり、また、温残留磁化獲得曲線の成分解析において保磁力70mT程度の成分が現れることが判明した。これは、酸化・還元境界直下で、形状異方性の大きな、つまり縦横比の大きな生物源マグネタイトの存在量が増加している可能性を示す。一方、FORC図において、生物源マグネタイトの存在を示すとされる磁気相互作用が極めて小さい特徴的なシグナルは、海底直下から酸化・還元境界までの酸化的環境の堆積物試料においても見られ、走磁性バクテリアの生息と堆積物中への生物源マグネタイトの保存は、酸化・還元境界付近に限られないことが推定される。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に述べたように、おおむね研究計画に沿って進捗している。
西部赤道太平洋の堆積物コアを用いた研究については、宇宙線成核種10Beの測定を完了させ、生物源と陸源の磁性鉱物量比の変化に影響されない古地磁気強度変動を求めることにより、従来の古地磁気手法に基づく相対古地磁気強度推定への生物源・陸源磁性鉱物比の変化の影響を定量化する。また、堆積物の残留磁化獲得深度と、生物源マグネタイトの存在量及び、堆積物粒度組成や堆積構造との関係を考察する。日本海表層堆積物を用いた研究については、透過電子顕微鏡による磁性鉱物の観察を集中的に行い、酸化・還元境界直下に形状異方性の大きな生物源マグネタイトが卓越するかを確認する。そして、化学的環境の違いがそこに生息する走磁性バクテリアの種組成に影響し、その結果堆積物中に残される生物源マグネタイトの卓越する形態に違いが生じる可能性を検討する。
最終年度には、研究成果のとりまとめのための研究代表者・分担者間の打合せや、研究成果公表に関する経費が多く必要になる見込みとなったため、助成金の一部を平成27年度に使用することとした。
「次年度使用額」は、研究成果のとりまとめ、公表の加速のために使用する。
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Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 15 ページ: 3190-3197
10.1002/2014GC005376