研究実績の概要 |
ダストは恒星の誕生から死,惑星系形成,銀河化学進化と様々な局面で重要な役割を果たす.赤外線天文学の進展により誕生した宇宙鉱物学は現状では「鉱物から鉱物形成条件 (地質プロセス) を読み解く」までには至らず,ダスト形成条件を観測から求めることができない.申請者らのこれまでの実験・分光理論研究を基に,(1) 主要鉱物フォルステライト気相成長速度および異方性を原始惑星系円盤条件 (温度,圧力,ガス組成) を制御した実験で求め,(2) 気相成長でつくられる異方的形状をもつフォルステライトの赤外スペクトルから,赤外観測からフォルステライトダスト形成条件を読み解くための指標をつくり,(3) 観測データから原始惑星系円盤でのフォルステライト気相成長条件を求める.鉱物学を地球,太陽系から「宇宙」へと広げるための一歩とする. 最終年度の平成27年度は,真空赤外炉を用い,原始惑星系円盤を模擬した低圧水素-水蒸気ガス条件でのフォルステライト凝縮実験を継続し,フォルステライトの凝縮係数を 1350 K, pH2=5 Pa, H2O/H2=0.025, 過飽和比 15-30 の条件で 0.003-0.006 と決めることに成功した.これは原始惑星系円盤でのフォルステライトダストの形成が同程度の温度条件で形成される金属鉄ダスト (Tachibana et al., 2011) に比べ,非効率的であることを示す強い証拠となる.
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