研究課題/領域番号 |
25287141
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 美千彦 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70260528)
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研究分担者 |
嶋野 岳人 富士常葉大学, 環境学研究科, 准教授 (70396894)
安井 真也 日本大学, 文理学部, 准教授 (90287566)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 噴火様式 / 火成岩 / 結晶サイズ分布 / ナノライト / マイクロライト / ブルカノ式噴火 |
研究実績の概要 |
桜島など、開口火道から継続的にマグマを噴出している活火山では、噴出物の物質科学的モニタリングによって地下のマグマ状態の変化を事前に把握し、活動の推移予測ができる可能性がある。これまでマグマの上昇速度の推定に用いられてきたマイクロライトの減圧結晶作用は、マグマ溜りから地殻浅部までの平均的上昇速度は反映するが、爆発の発生を支配する浅部火道での滞留時間や、ガス過剰圧の蓄積などの過程は反映しない。そこで本研究では (A-1)大部分のマイクロライトが晶出する場よりも、より地表近くの大きな過飽和条件下で核形成・成長するナノライトについて、TEM観察により、輝石および鉄チタン酸化物の化学組成と空間群を明らかにするとともに、さらに細粒(~1 nm)の磁鉄鉱ウルトラナノライトが一部の噴出物に晶出していることを突き止めた。(A-2)火道浅部条件に相当する6MPaの水蒸気圧での結晶化実験により、水蒸気圧・時間・温度による結晶度・結晶数密度を定量化し、さらに結晶形態を分類することができた。 (B)不均質なメルトフォームの表面張力による形状緩和と、それによる連結空隙の消滅速度を実験により決定した。不均質な発泡構造を持つマグマでは、形状緩和による自己圧密ユニットが多数形成され、メルトが雫状の形態をとって、ホストとゲストの関係がガスとメルトとで局所的に入れ替わること、そして雫状メルトの間に、連結度の高い空隙が形成されること、さらに重力による圧密で、このような空隙は速やかに閉鎖することが見出された。安山岩質メルトでは、1000℃で数十分以内にこのような形状緩和が進行することが明らかとなり、低浸透性のマグマが火道上部に「蓋」をして、過剰圧が蓄積されるメカニズムとその時間スケールが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の中心的な研究である、具体的な噴火事例に関するナノライトの記載岩石学について、国際的にインパクトの高い雑誌であるGEOLOGY誌に論文を発表することができた。さらに、H27年度に予定していた計画を先取りし、TEM観察により、さらに数密度の高いウルトラナノライトを発見するとともに、輝石・鉄チタン酸化物ナノライトの空間群と固溶体組成も決定することができた。また、ナノライトの結晶化実験を水蒸気圧・時間・温度を変えて数多く実施することができ、結晶度・結晶数密度を定量的に決定するとともに、結晶形態に系統的な変化が見られることを見出した。これらは、ナノライトの結晶化カイネティクスの全体像を掴む上できわめて大きな前進である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するために、以下を実施する。 (A)これまでの研究により、霧島火山新燃岳2011年噴火のブルカノ式爆発で放出された石質岩片の石基中に、チタン磁鉄鉱のナノライト・ウルトラナノライトが晶出していることがわかった。チタン磁鉄鉱は磁性鉱物であるので、磁鉄鉱ナノライトの存在を迅速に判定する手法として、火山灰や軽石・スコリアの初期帯磁率が応用できる可能性がある。そこで、最適な測定手法を確立するとともに、いくつかの火山噴出物について測定例を積み重ねる。(B)火山ガラスを用いたナノライトの晶出実験産物の解析を引き続き行う。これまでに、実験条件に応じて敏感にナノライト形状が変化し、水蒸気圧と実験時間についての概要が掴めたので、今年度は、ミクロンオーダーの研磨と観察を繰り返すシリアルセクショニング法によって、その三次元形態を正確に把握する。また、微小な樹枝状ナノライト結晶の三次元的な形状を明らかにするために、X線マイクロトモグラフィ―による撮影を行う。(C)表面張力による気泡の形状緩和実験に関しては、実験はほぼ終わり、投稿論文もほぼ完成しつつあるので、それを投稿する。また天然の噴出物との比較を行うために、桜島や阿蘇火山などの噴出物のX線CT撮影を行い、火山の火道浅部状態と、揮発性成分による増圧過程を解明する。以上について、得られた結果を取りまとめ、地球惑星科学連合大会・日本火山学会等にて発表を行うとともに投稿論文を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた一部の消耗品について、他経費で購入することができたため、使用額が予定額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表のための旅費、実験用備品、X線CTデータ解析や論文執筆のためのPC関係物品費に使用の予定。
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