研究課題/領域番号 |
25287143
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
瀬戸 雄介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10399818)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線回折 / 格子選択配向 / 下部マントル / レオロジー |
研究実績の概要 |
地球マントルの物理的性質(地震波、電気伝導度、粘性など)には、マントル岩石を構成する鉱物の種類だけでなく、その配列の仕方(格子選択配向)や、粒子サイズ、応力環境といった要素が大きく影響している。本研究は、角度分散X線回折によって得られた多結晶体の二次元回折図形から、選択配向性や応力環境といった情報を抽出する手法の開発を目指している。さらに、その方法の妥当性を検証するため、下部マントルや核を模擬した多相系の高温高圧実験を行い、先端的な微細加工・観察技術を駆使して回収試料の微細組織を評価し、下部マントルを構成する物質の変形や応力に対する組織変化過程を明らかにすることが本研究の目的である。本年次では、主に二次元全パターンフィッティング解析のアルゴリズムの改良を行った。前年度に導入したcubed sphere gridと呼ばれるモデルをさらに最適化し、計算速度の高速化を図った。従来の10倍以上の高速化とメモリ使用量の低減に成功し、30分程度で十分な精度の格子選択配向性を抽出することが可能になった。開発したアルゴリズムを検証するため、昨年度に引き続き、ダイヤモンドアンビルセルを用いた、1軸圧縮実験および放射光X線回折実験を行った。さらに熱重量・示差熱装置を導入し、実験出発物質に用いる含水鉱物試料の、含水量や脱水温度の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子選択配向を解析する基本的なアルゴリズムについては、cubed sphere gridモデルの導入によって劇的な高速化を達成しており、ほぼ開発を終えている。複数相同時解析や多方向回折図形解析については、インターフェースの部分はほぼ完成しているものの、収束解の検証は十分に行っておらず次年度以降の課題となる。実際の試料を用いた非静水圧下における圧縮実験については、放射光施設のユーザータイムの削減に伴って実験時間がやや不足しているが、おおむね予定通りに進んでいる。これらの状況を総合的に勘案して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、前年度までに作成した二次元全パターン解析について、CPUの並列化による更なる計算速度の向上を目指す。また、複数相同時解析や応力テンソルの計算アルゴリズムの導入に取り組む。放射光X線回折実験では、高輝度光科学研究センターおよび高エネルギー研究所にビームタイム申請を行い、特に含水鉱物を含む出発物質に注目して、一軸圧縮下における多結晶物質の挙動を解明する。また、回収試料の解析については、透過型電子顕微鏡による微細組織観察および後方散乱電子回折法による結晶方位密度分布を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度導入したTG-DTAの消耗品である試料容器が、在庫切れにつき、年度内に納品できなかったので。
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次年度使用額の使用計画 |
TG-DTAの試料容器を購入する。
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