研究課題/領域番号 |
25287144
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
栗谷 豪 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80397900)
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研究分担者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00467028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 火山 / 岩石・鉱物・鉱床学 / 地球化学 / マントル遷移層 / 水循環 |
研究概要 |
本課題研究は、中国北東部下のマントル遷移層の含水量を、火山岩を対象とした物質科学的解析に基づいて推定し、地球物理学的観測によって推定される含水量の妥当性を検証した上で、全地球規模でのマントル遷移層の水分布の定量的解明につなげることを目的とする。 今年度の当初の研究計画は、中国北東部のChangbaishan地域、およびKuandian地域からマントルカンラン岩を包有する未分化な玄武岩試料、および分化した流紋岩試料(Changbaishan地域のみ)を採取し、岩石学的・地球化学的解析を行うことであった。そこで昨年の夏、Changbaishan地域で野外調査を行い、計画通りにマントルゼノリスを包有する玄武岩、スコリア試料、流紋岩試料を採取した。それらのうち、玄武岩とスコリア試料、および数年前にLonggang地域で採取した未分化な玄武岩試料を対象に、全岩主成分組成分析(XRF;大阪市立大学)・全岩微量元素組成分析(ICP-MS;東京工業大学)、鉱物組成分析(EPMA;東北大学)を行い、基本的な岩石学的・地球化学的記載を終了した(ただし放射性同位体組成は未分析)。 さらに、Changbaishan地域から採取されたスコリア試料に含まれる斑晶のガラス包有物を対象に、含水量についての予察的な測定をEPMAとFT-IR(ともに東北大学)で行った。その結果、ガラスには最低でも3.4 wt.%の水が含まれていることが明らかになった。また、含水量と同時に測定したガラスのK2O量等を用いて検討したところ、Changbaishan地域の玄武岩マグマのソースマントル含水量は350 ppm以上であると推定され、通常の上部マントルの含水量(約120 ppm)よりも有意に高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国北東部・Changbaishan地域での野外調査では計画通りに火山岩試料を採取でき、またChangbaishan地域とLonggang地域の代表的な試料を対象に、岩石学的記載や全岩化学組成分析(主要元素、微量元素、水)を計画通りに終えることができた。さらに、予察的ではあるものの、Changbaishan地域についてのソースマントル含水量を推定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで概ね計画通りに研究を遂行できていることから、研究計画の大きな変更は必要ないと考える。しかし、かつての調査で採取した火山岩(Longgang地域)の中から、本研究を遂行する上で極めて有用な試料が、当初の想定外で見つかったことから、その試料の解析結果に基づいて、26年度の調査対象地域、および調査そのものの必要性の有無を検討する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
学術研究助成基金助成金の直接経費(4,200,000円)分は、当初は平成25年度中に大阪市立大学で使用する予定であったが、25年度の比較的早い時期に26年度から他の研究機関(北海道大学)に異動することが内定した。そして当初購入予定であった物品の多くが北海道大学の研究室に備わっていることが明らかとなったため、全額を26年度に繰越し、新しい研究室に備わっていない(かつ、研究の遂行に必要な)備品・消耗品の購入に充てることにした。 本研究の遂行には、岩石試料の高精度の化学分析が不可欠である。このことから、特に微量元素濃度分析や放射性同位体組成分析に必要な超純水製造装置等の購入に使用する予定である。
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