研究課題
本研究課題は、中国北東部下のマントル遷移層の含水量を、火山岩を対象とした物質科学的解析に基づいて推定し、地球物理学的観測によって推定される含水量の妥当性を検証した上で、全地球規模でのマントル遷移層の水分布の定量的解明につなげることを目的とする。今年度の当初の研究計画は、(1)火山岩の地球化学的解析をおこなうための鉛同位体比測定法の確立、(2)Changbaishan地域とLonggang地域の玄武岩の化学分析および岩石学的解析、(3)Changbaishan地域とLonngang地域におけるマグマ生成条件の推定、であった。まず(1)については、所属する研究室におけるクリーンルームの整備(超純水製造装置の導入、試薬蒸留システムの構築、その他)を行った上で鉛の化学分離法を確立し、また平成26年の夏に導入されたNeptuneを本格稼動させることで、鉛同位体比が簡便に測定できるようになった。(2)については、Changbaishan・Longgang両地域の火山岩について全岩主成分元素濃度測定、微量元素濃度測定(研究分担者)、放射性同位体比の測定、およびEPMAを用いた火山岩の斑晶化学組成の分析を予定通りに行った。(3)については、(2)で得られた情報に基づいた解析を行い、Changbaishan地域については予定通りにマグマ生成条件(マントル含水量、マグマの生成・圧力条件)の推定を行うことができた一方で、Longgang地域については27年度へ持ち越しとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、遷移層起源マントル上昇流のプルームセンターに相当するChangbaishan地域、少し離れたLonggang地域、大きく離れたKuandian地域の岩石を採取し、マグマ含水量や地球化学的特徴の系統的変化を利用して、遷移層マントルの含水量の推定を行うことが主目標である。この目的を達成するためには、3年計画の2年目終了時までに、解析対象の岩石試料の収集を終え、岩石学的・地球化学的データをほぼ取得しておく必要があった。これまで、Kuandian地域については試料採取が行えなかったものの、東京大学総合研究博物館に保管されている同等の試料(Baidaoshan)を使用させていただくことができ、岩石の収集とデータ取得について、ほぼ予定通りに進めることができている。
研究目的遂行のために残された作業は、(1)Longgang地域の火山岩の解析に基づくマグマ含水量の推定、(2)Baidaoshan地域の火山岩の岩石学的・地球化学的解析、およびマグマ含水量の推定、(3)Changbaishan、Longgang、Baidaoshan地域のソースマントル含水量の推定、および(4)(3)と各地域の地球化学的特徴の空間変化を利用した、遷移層マントルの含水量の推定、である。以上の作業は、問題なく進められる見通しであり、本研究の主目的はほぼ確実に達成されると考えている。
平成27年度に入ってすぐに研究費を利用できるようにするため、若干の繰越額を残した。
27年度の予算額全体に占める割合は僅かであることから、当初の使用計画からの変更は無い。
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