氷衛星内部における有機物の振る舞いを検討するため,有機物の低温における圧縮実験を試みた.ベンゼン,ナフタレン,アラニンを出発物質とした実験では,室温にもかかわらず重合反応が確認された.アラニン水溶液を出発物質とした実験では,ペプチド生成機構が脱水反応であるにもかかわらず,水の共存状態でペプチドが生成することを確認した.これは,アラニン水溶液を圧縮した際に,水が液体から固体へと相変化してアラニンが水から追い出されて分離,濃縮するために起こることが判った.以上の結果は,氷衛星内部が化学進化の場になり得ることを示唆するものである.
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